長友が語った強い気持ちと
スペイン戦の勝機

 テレビ朝日系で生中継された一戦の平均世帯視聴率が42.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に、瞬間最高視聴率に至っては53.8%(同)に到達。約6080万人が視聴したと同局が推計するなど、期待が大きかった分だけ敗戦の反動も大きかった。結果を出せなければ批判されて当然と受け止めながら、長友は持論を展開する。

「うまくいかなかった選手が批判されている、というのは聞いています。もちろん批判されるのは当たり前ですけど、それは若手に対してではなく、若手が躍動する雰囲気を作れなかった僕のようなベテラン選手に対して向けられるべきというか、一番批判されるべきなのは僕だと思っています」

 カタール入り前に金色に染めた髪を、長友はドイツ戦前日に赤色に変えている。日の丸の赤と自身の情熱、そしてチーム全体の情熱の象徴だと明かした長友は、こんな言葉も残している。

「ここまで派手なことをやってダメだったら、すべての批判を自分が受ける覚悟でやっていました。なので若手には伸び伸びと、何も考えずにプレーしてほしい、という思いも込めていました」

 行動の原点は長友にとって初めてのW杯だった2010年の南アフリカ大会。ベテランの域に達していた中村俊輔さんや中澤佑二さん、川口能活さんから「他のことはこっちでやるから、お前たちは自分の仕事に集中しろ」と声をかけられ、心を震わせたかけがえのない経験となる。

「あのときの光景や感じたものを、逆に僕が出す立場になった。W杯を4大会も続けて経験させてもらってきたなかで、僕がこのチームに入っている価値を示せるのはいまだ、と」

 ピッチの外で担う役割をこう語る長友だからこそ、伊藤をはじめとする若手の防波堤になり切れなかった点で、12年前の大先輩たちにまだ肩を並べていないと反省した。ただ、カタールの地でまだ何も手にしていないし、何も失っていない。仕事がさらに増える状況を、長友は笑顔で歓迎する。

「相手が強敵のスペインだからこそ、自分ももっと強い気持ちになれるんです」

 スペインに勝てば無条件で決勝トーナメント進出が決まり、引き分けならば同時間帯に行われるドイツ対コスタリカの結果に委ねられ、負ければグループステージ敗退が決まる。ボールポゼッションで圧倒的に上回られると予想される展開で、長友はカウンターに可能性を求めた。

「チャンスはそこまで多く作れないと思いますけど、まったく作れないこともない。まずはしっかり守って、相手がバランスを崩したときに生じるギャップや隙みたいなものを突いていきたい」

 運命のスペイン戦のキックオフは12月1日22時(日本時間同2日午前4時)。日本がドイツを撃破した記憶が色濃く残る、ドーハ郊外のハリファ国際スタジアムが再び大一番の舞台となる。