レコード会社の社員時代はプロデューサーとして、ミリオンヒットを10回記録した後、絶調期にニュージーランドに移住。その後、12年かけてリモートワーク術を構築してきた四角大輔氏。彼のベストセラー『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』は、次世代のミニマリストのバイブルにもなった。
そんな四角氏と旧知の仲である、ベストセラー・レバレッジシリーズで知られる本田直之氏との対談が実現。四角氏の新しい著書『超ミニマル主義』の話を中心に、これからの時代の生き方、働き方などについて、語り合っていただいた。(構成/伊藤理子 撮影/石郷友仁)
日本人は自分で自分のタスクを増やしている
四角大輔(以下、四角) 本を書くようになって12年くらい経つんですけれど、ずっと「仕事よりも暮らしや遊びを優先せよ」とか、「キャリアデザインよりもライフスタイルデザインの方が大事だよ」みたいなことをずっと言ってきてたんですよ。
ともすれば、「仕事なんてどうでもいい」と取られかねない話をし続けてきたんですけれど、僕の人生を振り返ると、仕事が充実していたから日々の生活の充実度も高まっていたし、楽しく働けて一定の成果を得られたからこそ、人生の幸福度も高くなっていたなってことに気づいたんです。
本田直之(以下、本田) そうだね。
四角 ナオさんはまさにその生き方を体現していて、仕事もバリバリやってて、めちゃめちゃ遊んでるじゃないですか。2010年ぐらいに「俺もうさ、ビジネスよりもライフスタイルの発信をしたいと思っているんだよね」とおっしゃってたんですよね。で、そこから思い切りそっちにシフトしている。そういう生き方ができるのは、若いうちからしっかり働いて、そこでベーシックスキルはもちろん、専門スキルをガッツリ手に入れていたから、今のような生き方ができているんだと思うんです。
だから僕も、今回の本で「働き方」と「仕事術」に特化してみたんです。ナオさんを見て、この2つをクリアしないと幸せな生き方はできないんじゃないかと気づかされたから。
本田 俺自身は、いろいろな本を読みまくって実践してみて、自分ならではの型を作ってきたけれど、それを大輔が1冊の本にまとめてくれたからこれさえ読めばいい。だからこそ、教科書なんだよ。自由に生きるためには、身軽になる必要があるけれど、捨てるのが怖くて、持たなくてもいいものまで抱え込んでいる人が多いんだよね。でも、何が大事なのかを自分で判断して、どんどん捨てていかないと、本当の意味で自由にはなれない。
四角 特に自由のためには「時間の余白」が重要。我々を縛っているのは物質、非物質いろいろありますが、一番大きなのはタスク。みんなタスクに追われまくっていて、自由を失っている。日本人は欧米人の仕事のやり方に「ゆるい」印象を持っているかもしれませんが、日本人は逆に組織に配慮したり、他人を察する能力が高すぎて、自分で自分のタスクを増やしてしまっている。欧米は個人主義だから、わざわざそんなことしない。
本田 必要以上のことまでやらなくてもいいのにね。
四角 僕が住んでいるニュージーランドは、みんなあまり仕事をしないし、ゆるいし、モノも少なくて不便な国なんですけれど、これでも社会が回っているんですよ。
本田 (笑)海外に行くとわかるよね。まさにハワイもそう。
四角 日本はものすごく便利だし、あらゆる場面で細かい気遣いがされている。日本好きのヨーロッパ人って多いですけれど、日本人の「おもてなし精神」の緻密さが好まれているんです。
でもこれって、おもてなしを受ける側はいいんですが、提供する側にとってはかなりの過重労働なんですよね。仕事でも、組織のため、上司のため、クライアントのために、そこまでやらなくてもいいよってことまでやってしまう。それ自体はいいんですけれど、日本の労働生産性は先進国で最低で、育休や有休の取得率も低い。そして幸福度も低い。だから、そこに踏み込みたいという思いがあったんです。
本田 海外の人たちを見ていると、仕事をしてないのに、仕事ができている。なぜかというと、やるべきことだけにフォーカスしているからなんだよね。だから、できないようにみえて、できちゃう。大事なことは、完ぺきにこなしている。
四角 芯を食っているというか。
本田 そうそう。まあボロボロ抜けていることもあるんだけれどさ、芯さえ食っていればいいじゃない。仕事ができない人は、芯を食ってない。タスクを減らすという行為は、芯にフォーカスするためのものだと思うんだよ。
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役
ハワイ、東京に拠点を構え、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行いながら、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々へ食およびサウナを巡る旅し、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。食やサウナのイベントのプロデュースも行う。コロナ禍では各地方にある酒蔵のPR支援などにも取り組む。著書に、レバレッジシリーズをはじめ、『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』(ダイヤモンド社)、『トパーソナル・トランスフォーメーション コロナでライフスタイルと働き方を変革する』(KADOKAWA)等がありオンラインサロン「Honda Lab.」主宰。