主な原因と考えられているのが、日照不足だ。

「うつ症状は脳内物質の一つであるセロトニンが不足すると、出現しやすくなります。セロトニンは、日光を浴びると分泌されやすくなるため、日照時間が短い冬にうつ症状が現れやすくなるのです」(工藤医師)

 冬季うつは、高緯度地域すなわち北国に多いとされている。しかし低緯度地域(南国)でも天候が不安定になりやすい場所では発症率が高くなる。また、日本で実施された調査でも、秋田市や札幌市など日照時間が短い地域ほど、冬季うつ病になる危険性が高い人の割合が多いことが報告されている。

 さらに女性は男性の4倍冬季うつ病にかかりやすいと言われ、特に20~40代の女性に多いという報告があり、注意が必要だ。

「思春期や出産前後、更年期、老年期など、女性ホルモンのバランスが崩れやすく、心が不安定になりやすいライフステージにいる人は、気をつけたほうがいいでしょう」(工藤医師)

 また工藤医師は「コロナ禍の生活習慣の影響で、冬季うつのような症状を訴える人が増え、高校生や大学生からの相談も多くなっている」と指摘する。

「リモートワークやオンライン授業が普及したことで室内での作業が続き、太陽に当たる機会がさらに減少していることが影響している可能性があります」

照明を明るくするだけでも予防策に

 自分が冬季うつかどうかを知るには、気分や睡眠が季節によってどれだけ大きく変動するかがわかる「Seasonal Pattern Assessment Questionnaire(SPAQ)」というチェックリストが目安になる。

気分や睡眠が季節によってどれだけ変動するのかを確認するためのチェックリスト、「Seasonal Pattern Assessment Questionnaire(SPAQ)」気分や睡眠が季節によってどれだけ変動するのかを確認するためのチェックリスト、「Seasonal Pattern Assessment Questionnaire(SPAQ)」
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 合計点が7点以下であれば季節変動が「正常範囲内」、8~11点であれば「冬季うつの前段階」、12点以上は「冬季うつの可能性がある」とされている。

 冬季うつの前段階または、可能性がある場合、日常生活ではどのような点に気をつければいいのか。工藤医師に五つのポイントを挙げてもらった。