生前贈与「7年前」まで相続財産に加算
65年ぶりルール改正で相続税増税へ
実際に、21年の贈与件数は急増している。国税庁のまとめによれば、21年分の確定申告で贈与税の申告書を提出した人は前年比9.5%増の53.2万人。申告納税額は同20.0%増の3327億円だった(下図参照)。
21年にはルール改正の実施や賃金アップといった贈与を促すイベントは特になかったため、駆け込み贈与によって増えたとみていいだろう。
もともと、亡くなる直前に贈与して相続税から逃れることを防ぐため、相続開始3年前(つまり死亡3年前)以内の贈与については、相続財産に加算して相続税を課税する「持ち戻し」という制度がある。このルールは1958年度の制度改正で作られたものだ。
今回、政府税調は専門家会合での議論を踏まえ、この加算期間を現行の3年から5~10年に延ばすことが適当だとする見解を示した。そして、政府、与党が12月15日をめどに公表予定で取りまとめを進めている23年度の税制改正大綱で、加算期間を「7年」に見直す方向で調整していることが関係者への取材で分かった。
つまり、亡くなる10年前から毎年110万円ずつ生前贈与していた場合、従来は1100万円のうち330万円分が相続財産に加算されたのに対し、改正後は770万円分が相続財産に加算されて課税対象になる。相続税の増税につながる65年ぶりの生前贈与のルール大改正だ。
加算期間の延長の他にも、一部の贈与を非課税とする特例の廃止といった、生前贈与の「節税つぶし」が23年度税制改正大綱には盛り込まれる見込みだ。こうした内容を含む相続税・贈与税のルール改正案の骨子が、ダイヤモンド編集部の取材で判明した。
ダイヤモンド・オンラインでは、相続税・贈与税のルール改正案の全貌について、特集『さよなら!生前贈与』の#1『【スクープ】「生前贈与潰し」法改正の中身入手!年110万円贈与の節税効果激減、65年ぶり変更で大増税へ』(https://diamond.jp/articles/-/313799)で詳報している。また、65年ぶりのルール大改正に備えたラストチャンスの駆け込み対策も同特集では紹介していく。
Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata