この他、YouTubeでも多くのショートフィルムがアップされ、数万回以上の再生数を誇る作品も珍しくない。

「ショートフィルムのニーズが、少なくとも日本でこれほど高まったのは歴史上初だと思います」と前田氏も述べ、現在のショートフィルム人気に至る背景について、次のように解説する。

「そもそも動画コンテンツの視聴が一般化したのは、やはりスマホの影響が大きい。大画面スマホの普及と解像度の向上で、引きの構図などの表現が視聴者に伝わるようになり、本格的な映画やドラマがスマホでも見られるようになりました。もちろん、高画質の動画を配信できるネット環境が整ったことも、これを後押ししました」

 このような環境によって、ほとんどの人がパーソナルなスクリーンを持ち、映画やドラマ、その他の動画を視聴する習慣が定着していった。そして「今の時代は、明確に短い時間の動画コンテンツが求められている」(前田氏)という。

「TikTokやYouTubeのショート動画、インスタグラムのリール動画などはその好例。これまで、インターネット上の動画コンテンツはYouTubeで収益化することに特化したものばかりだったため、10分以上の動画が多かった。それより短いと広告が入らなかったからです。そうなると、素人が作った10~15分のダラダラとした動画があふれ、膨大なネット動画のうち“ゴミが9割”と呼ばれる状態になりました。一方、TikTokなどのショート動画は、極端に尺が短く、素人っぽくても気にならないのでよく見られるようになりました。その流れの中で、現在では10分以下の短い動画コンテンツの需要が高まっているのだと思います。また、2時間の映画を早送りで見る人もいるほど、みなさん時間に追われているので、ショート動画が求められるのは必然といえます」