シルクロード上の関所跡、嘉峪関(かよくかん)付近を走る在来線の夜行寝台列車シルクロード上の関所跡、嘉峪関(かよくかん)付近を走る在来線の夜行寝台列車(提供:中国鉄道時刻研究会)

今年鉄道開業150年を迎えた日本では、今も紙版の時刻表を愛用する人が多いが、隣国・中国ではネットの発達などにより紙版は2016年に廃止された。ところが、それ以前の2014年から、日本で、日本語による紙版の「中国鉄道時刻表」を編集・発行し続けている有志がいる。日本の鉄道のおよそ8倍にも及ぶ中国鉄道13万キロメートルのすべてを網羅した詳細な時刻表と中国鉄道情報は、じわじわと日本国内の中国鉄道ファンを増やしているだけでなく、海を越えて中国の人々にも称賛されているという。(ジャーナリスト 中島 恵)

東大在学中に、日本語で読める中国の鉄道の時刻表を創刊

『中国鉄道時刻表 2022 秋 Vol.10』(中国鉄道時刻研究会)『中国鉄道時刻表 2022 秋 Vol.10』(中国鉄道時刻研究会)

「中国鉄道時刻表」は日本の時刻表と同じB5サイズ。10月30日に発行された最新号(2022秋、第10号)は全610ページ(厚さ2.5cm)のボリュームで、定価は3500円。日本の時刻表と似たようなサイズや装丁だが、中身はすべて中国の鉄道の時刻表や路線図、乗車サービスの案内、運賃などの紹介であり、ページをめくると、一瞬で自分が広大な中国大陸を旅しているような楽しい気分になってくる。

 発行人は日本生まれ日本育ちの中国人、何玏(かろく)氏。東京大学工学部在学中の2013年、同じく東大の友人で鉄道ファンだった日本人のtwinrail(ハンドルネーム)氏らと「日本で中国の鉄道時刻表を作ろう」と意気投合し、中国鉄道時刻研究会を結成。2014年夏に第1号を発行した。

 当初は採算を考え、200部限定、定価2000円で発行したが、発行するとすぐに評判を呼び、4回も重版するヒットとなった。何氏は「第1号を発行して分かったのは、日本全国には自分たちと同じように、こういうもの(中国鉄道時刻表)を作りたい、読みたいと思っている人がかなりいたこと、そして需要があったという手応えでした」と語る。

 以降、日中双方の漢字に詳しい人など心強い有志も加わり、ブラッシュアップを重ねて、1年に2回、最新号の第10号まで「中国鉄道時刻表」を発行し続けている。大手書店や中国書籍専門書店などのほか、中国鉄道時刻研究会のホームページ上で直接販売も行っている。