他者を断罪し、責めるための理屈
次は、フリーマガジン『フリースタイルな僧侶たち』による「フリースタイルな僧侶たち賞」です。選ばれたのは、北九州市八幡東区にある浄土真宗本願寺派永明寺の作品「NO WAR PLEASE Нет войне」です。
この作品を書いた永明寺住職の松崎智海師は、ウクライナでの戦争が始まった当初、どのお寺でも印刷して使えるよう、このデータをオープンにしました。その結果、同じスタイルのものが全国のお寺の掲示板に登場したのです。
これは、全国のお寺の掲示板を使った一種の反戦活動といえるかもしれません。お寺の掲示板にロシア語の言葉が載ったのはおそらく初めてではないでしょうか。『フリースタイルな僧侶たち』による講評は以下の通りです。
なんとなく良い感じの言葉が溢(あふ)れる中、当たり前なことを、でもどこか他人事なことをストレートに再認識させてくれました。
戦争が始まって、すでに10カ月近くが経過しました。一日も早く戦いが終わることを心から願っています。
続いて、宗派を超えた僧侶とさまざまな人々の協同を支援する一般財団法人「寺子屋ブッダ」による「寺子屋ブッダ賞」の受賞作品を紹介します。大分県宇佐市にある真宗大谷派寶泉寺の作品「人間みんな裁判官 他人は有罪 自分は無罪」です。
私たちはいつも、自分の価値観・ものさしに従って他者を断罪して“有罪・無罪”の判断を下しています。その判断は往々にして、自分に対しては甘く、他人に対しては厳しくなる傾向にあります。これまでもさまざまな場所で、自分の価値観が絶対だと思う人によって何度も争いが繰り返されてきました。現在はまさにウクライナで、そのような悲劇が起こっています。「寺子屋ブッダ」による講評は以下の通りです。
勝手に作った法律を基に都合よく裁く裁判官。自分では公平に裁いていると思い込んでいるから手に負えないですね。なんなら、最強バイアス弁護団も参戦します。そしてそれが「人間みんな」だと。未来に残したい、心にしみる掲示板でした。
自分のものさしや価値観が果たして正しいのか? それを仏さまの教えに照らして問い続けることが大切なのです。