加熱式たばこの普及で、子どもの被害増

 また、斎藤氏によれば、日本の場合、この家庭内受動喫煙を早急に取り締まらなくてはいけない事情があるという。

「日本では今、加熱式たばこが急速に普及しています。この背景には喫煙者の多くが、紙巻きたばこと比べて煙が出ないので、受動喫煙の害が少ないと考えているということがあります。しかし、これは間違いで、加熱式たばこであってもニコチンや発がん性物質が入っているのでまわりの人は受動喫煙の被害を受けます。つまり、加熱式たばこが普及することで、家庭内や飲食店などで子どもの受動喫煙被害が増える恐れがあるのです」(齋藤氏)

 それがうかがえるデータもある。消費者庁の「家庭内における、乳幼児のたばこの誤飲実態の把握」(令和3年1月)の中には、「子どもの前でたばこを吸うことがあるか?」という質問がある。「吸っている」「時々吸うことがある」と回答をしたのは、紙巻きたばこの場合は46.1%だったが、なんと加熱式たばこは49.8%となっている。

 そこに加えて加熱式たばこには、もうひとつ忘れてはいけない危険性があると斎藤氏は言う。

「それは乳幼児の誤飲です。加熱式たばこのカートリッジは、紙巻きたばこよりも小さいので、赤ちゃんが間違って口に入れてしまうとそのまま喉に入ってしまうんです。また、紙巻きたばこの吸い殻は放置していると火事などの危険性もあるので、親もちゃんと後始末をしますが、カートリッジは熱くもないので、テーブルの上などその辺に置いてしまう。それを食べてしまうという被害が増えているんです」(齋藤氏)

 実際、先ほどの消費者庁の調査でも、「吸い殻」を乳幼児が誤飲しそうになった経験があるかを調べたところ、紙巻きたばこは、「ある」「入れかけたことがある」は紙巻きたばこでは15%だったが、加熱式たばこは20.1%となっている。

 つまり、喫煙者の皆さんの中には、紙巻きたばこから、加熱式たばこへとスイッチしたことで、「煙も出ないしなんか体に良さそう」と感じている人もいるかもしれないが、実はそう思っているのは本人だけで、周囲の子どもや乳幼児からすれば、受動喫煙や誤飲の危険性が高まっているという現実があるのだ。

「私も昔、新聞にも受動喫煙を児童虐待だと書いたら言い過ぎだと言われた経験がありますが、ニュージランドでは、2009年以降に生まれた子どもが生涯にわたって喫煙できないような法改正案が提出されるなど、世界では『たばこのない国』が確実に増えています。日本政府も“こどもまんなか社会”の実現を掲げているわけですから、子どもの近くでたばこ吸うことは虐待だと認めるべきでしょう」(齋藤氏)