行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は日本電産、村田製作所などの「電子部品」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
日本電産が4項目で「過去最高」更新も
社内は混迷を極める
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の電子部品業界5社。対象期間は2022年5~9月の四半期としている(5社とも22年7~9月期)。
各社の増収率は以下の通りだった。
・日本電産
増収率:27.5%(四半期の売上高5904億円)
・村田製作所
増収率:3.2%(四半期の売上高4836億円)
・京セラ
増収率:14.2%(四半期の売上高5202億円)
・TDK
増収率:29.0%(四半期の売上高6115億円)
・日東電工
増収率:20.8%(四半期の売上収益2685億円)
電子部品業界5社は、いずれも前年同期比で増収となった。村田製作所を除く4社は2桁増収である。
中でも日本電産は、3割近い四半期増収率を記録するなど好調だ。同社は上半期(22年4~9月)の累計で、売上高・営業利益・税引前利益・最終利益の4項目で「過去最高」を更新した。
この日本電産では、22年9月に前社長・関潤氏の“解任事件”が発生し、社内に激震が走った。
創業者である永守重信氏の後継者含みで20年4月に日産自動車から招聘された関氏は、21年6月にCEO(最高経営責任者)に就いた。だが、その後の業績が永守氏のお眼鏡にかなわず、関氏はわずか1年弱で社長兼COO(最高執行責任者)に降格。永守氏がCEOに復帰した。
関氏はその後、車載事業などを担当したが、7月の決算会見で隣席の永守氏から公然と批判されるなど、厳しい評価を覆すことはできなかった。
関氏は結局、22年9月2日付で「業績悪化の責任を取るため」として事実上の解任に追い込まれた(詳細な経緯は『スクープ!日本電産“社長解任”全真相【前編】、永守会長が関氏に突き付けた「2通の通知書」の中身』参照)。
日本電産ではその後、9月3日付で、同社の創業メンバーで前副会長の小部博志氏が社長兼COOに就任。永守氏が会長兼CEOとして続投する新体制に移行した。
今回分析対象とした22年7~9月期は、日本電産がまさしく、関氏の退任や新体制への移行で揺れていた時期である。
混乱が起きる中、永守氏が問題視した車載事業の業績はどんな状況だったのか。次ページ以降では、電子部品業界5社の増収率の時系列推移と併せて、詳しく解説する。