変革できる企業と、できない企業の「差」
レインワンド 変革のトリガーが何だったのかという問題は、私たちも時間をかけて考えてきました。変革のきっかけ自体は、企業によって異なっています。既存の事業が低迷し、必要に迫られてという場合もあるし、現在の事業が順調に進展しているにもかかわらず、いち早く次なる一手を打つために変革に取り組んだ企業もあります。
共通点は、CEOやリーダーシップチームの姿勢でしょうか。自社の業績や経営環境の変化を認識したとき、反応の仕方は大きく2パターンに分かれます。1つは、変化を認識しながらも、「何が起こるか、まずは状況を見守ろう」という様子見パターンです。変化の最中に重要な決定を下すのは容易ではないので、そうなってしまうのでしょう。
一方、変化を前にして「いまは、大きなチャンスだ」と即座に行動を起こすCEOや経営陣もいます。彼らは「これからいろいろなことが変わっていくはずであり、自分たちはその最前線に立っていたい」と考えます。変革を実行できるのは、やはりこの後者のケースであることが多いですね。
池内 変革の7つの要件のうち、日本企業が苦手とするものはありますか。
レインワンド 私たちが世界中の企業と仕事をしてきた中で感じるのは、どんな国や地域の企業であろうと、必ず7つの要件のそれぞれに改善する余地があるということです。ですので、特に日本企業だから、という項目はありません。
池内 変革に終わりはないということですね。いま、多くの企業が、現状に対する危機感を持ち、自分たちの会社を変えていかなければと考えています。しかし現実には、そうした企業のすべてが変革に成功できるわけではありません。変革できる企業と、できない企業の「差」は何だと思いますか?
レインワンド 変革を実行できないのは、やはり明確な目的意識を持てていないからではないでしょうか。何かに取り組もうとすれば、時間もお金も労力もかかってしまうでしょう。中途半端にやれば、変革が進まないばかりか、既存事業での業績の向上も難しくなってしまいます。
目的意識を確固としたものにするためには、まずは経営陣や取締役会のメンバーが「現状維持は正しい選択ではない」と理解し、「自分たちは、これからどこに向かって進んでいくのか」について対話を重ねていくことだと思います。
池内 日本経済は長らく低迷し、ほかの国や地域に比べて、目立った成長を遂げられていません。かつてはグローバルに活躍する日本企業がたくさんありましたが、残念ながらその存在感は低下しています。さらにこれから少子高齢化が進めば、グローバルな競争力はますます落ちていくでしょう。日本企業が再び力を取り戻すには、どうすればよいとお考えですか。
レインワンド いま、マクロ経済学や人口統計学の見地から「日本企業の競争力が低下している」という課題を挙げてくれました。しかし、長年にわたって多くの企業の研究をしてきた私に言わせれば、「まだまだ成長する可能性はある」と思います。
もちろん、これまで通りの古いやり方に固執したり、現在の顧客に依存し続けたりするのであれば、可能性の扉は閉じたままでしょう。企業変革のファーストステップは、自分たちの組織がめざす目的、世界における立ち位置を根本的に考え直し、再定義していくことです。だからこそ、私たちは、困難や変化に直面している企業と仕事をするときには、「あなたの会社はどこに向かおうとしているのですか」「世界におけるバリュープロポジションは何ですか」ということを繰り返し問いかけているのです。
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