JD-R理論とジョブ・クラフティング

 JD-R理論(Job-demand job-resource理論)という理論があります。これは、仕事の要求度(job-demand: JD)が高いこと、仕事の資源(job-resource: JR)とジョブ・クラフティング(job-crafting: JC)が低いことがワークエンゲイジメントを下げるという理論です。

 具体的には、仕事の要求度(JD)には、

・仕事の量や質
・対人関係のストレス
・精神的・肉体的疲労

などがあります。

 一方、仕事の資源(JR)には、

・仕事のコントロール、自律性
・報酬の安定
・上司との信頼関係

 といった職場環境に関連するものと、

・ワークライフバランス
・自己効力感
・希望
・レジリエンス

 といった自分自身に関連するものがあります。

 また、ジョブ・クラフティング(JC)には、

・仕事の作業を再検討し、複雑なものを分解したり作業を工夫したりする余地をつくる
・仕事の社会的意義や自分の人生の目標と仕事が一致していることを認識する

 といった自己工夫や考え方の練り直しが含まれます。

 つまり、この理論に基づくと、

・仕事の量や質を下げ(JDの低下)
・上司が部下との信頼関係を築き(JRの向上)
・仕事に社会的意義があり主体的に実行する価値があると考え直させる(JCの向上)

 といったことが、ワークエンゲイジメントを改善すると言えます。

 仕事の量を減らしたり、質を下げたりすることは「生産性が高い状態を保ってもらう」という主旨と明らかに矛盾します。また、部下との信頼関係を良好に保とうとしたり、仕事の社会的意義を説明したりという努力をされてきた方も多いはずで、今さら言われてもこれ以上どうしていいかわからない、と思われるかもしれません。

 さらなる打ち手を探るため、これまで発表されてきた研究を、横断的に見てみましょう。