2022年も残りわずか。今年はたくさんの「名言」が生まれた年でした。トヨタ自動車の社長が入社式で話した言葉!北京五輪で銀メダルに輝いたカーリング女子日本代表の選手の言葉!高校野球の監督が残したあの名言!などなど、「たった数文字の言葉が、こんなにも人の心を前向きにしてくれるなんて」とハッとさせられる宝物のような言葉たちです。年間300以上の名言を集める「伝え方研究所」が、この1年をふりかえり、特に素敵な10の言葉をノミネート。ジャーナリストの田原総一朗さんら計7名の審査によって決まった、今年1番の名言を発表します!(構成/杉直樹 撮影/石郷友仁)

今年1番の名言は?「伝え方グランプリ2022」ベスト10北京冬季五輪/カーリング女子決勝・日本-イギリス。第7エンド、指示を出す吉田知那美 Photo:時事

「伝え方グランプリ」2022年のグランプリに輝いたのは?!

 1年間でもっとも素晴らしい伝え方を決める「伝え方グランプリ」の結果が、12月9日に発表されました。2022年のグランプリは、ジャーナリストの田原総一朗さんら計7名の審査を経て、「想像力さえあれば、太古でも未来でも、宇宙にだって行ける」という伝え方に決まりました。『タイタニック』や『E.T.』など名作映画の翻訳で知られる戸田奈津子さんが述べたコトバです。

「伝え方グランプリ」は、この1年間にテレビ、新聞、雑誌、SNSなどで発信されたコトバの中から、「最も素晴らしい伝え方」を選ぶ賞です。

 人を傷つけたり、悲しませたりするコトバがSNSなどで氾濫するいっぽうで、人を前向きにしたり、励ましたりする本来のコトバの力を見つめ直す取り組みとしてスタートしました。

 2017年の創設から数えて、今年で6回目。各種メディアから年間300以上の名言を集める研究機関「伝え方研究所」によって、10のコトバがノミネートされました。

 そして今回、ノミネート作は、ジャーナリストの田原総一朗さんをはじめ、幅広いバックグラウンドをもつ計7名によって審査されました。

 審査員は、以下の方々です。

田原総一朗さん(ジャーナリスト)
山口真由さん(信州大学特任教授)
堀江貴文さん(実業家)
坪田信貴さん(『ビリギャル』著者・坪田塾塾長)
土江英明さん(ダイヤモンド社編集者)
福岡元啓さん(プロデューサー・文教大学非常勤講師・『情熱大陸』元プロデューサー)
佐々木圭一さん(コピーライター・『伝え方が9割』著者)

今年1番の名言は?「伝え方グランプリ2022」ベスト10

 11月下旬に都内で審査会が開かれ、ノミネート作の順位が話し合われました。

 審査員はノミネート作の一覧表を真剣な表情で眺めながら、感想を書き込んだり、印をつけたりして検討を重ねていました。

今年1番の名言は?「伝え方グランプリ2022」ベスト10真剣な表情でノミネート作の一覧表に順位や感想を書き込む審査員ら

 審査会では、それぞれの審査員がつけた順位に対応する得点を集計して総合したうえで、話し合いが行われました。

 その結果、2022年のグランプリには、翻訳家・戸田奈津子さんのコトバが選ばれました。

【グランプリ】
「想像力さえあれば、太古でも未来でも、宇宙にだって行ける」(戸田奈津子さん)

今年1番の名言は?「伝え方グランプリ2022」ベスト10

 このコトバは、戸田さんが雑誌のインタビューで翻訳家の仕事について問われた際に答えた一節です。

 戸田さんは『タイタニック』『E.T.』『ミッション・インポッシブル』『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの名だたる映画にたずさわった有名な翻訳家ですが、「ひとりの女性が一生で体験できることはわずかでも、想像力があれば、どこへでも行ける」という、人間の無限の可能性を感じさせる点が、今回、高く評価されました。

 このコトバについて、審査員の方々は、次のようにコメントしています。

田原総一朗さん(ジャーナリスト)
「日本人は、正解がない問題をどうやって解くかという教育を全く受けていない。小学校も、中学校も、高校も、全部正解のある問題を出している。だけど世界の主要国は違う。G7(主要7ヵ国)の会合は、正解がないからこそやるものだ。こういう場面で、日本人は想像力を養う教育を受けていないから、政治家も全く通用しない。だからこそ、想像力がもっとも必要であり、そういう意味で、この言葉には重みがある」

山口真由さん(信州大学特任教授)
「スクールカーストの低位を彷徨っていた少女時代、私は本の世界に没頭しました。そこではヒーローにだってプリンセスにだってなれた。時空を超え、空間を超え、想像力の翼を限界まで延ばして映画の世界観をセリフとして紡ぎ、伝え続けてくれた戸田奈津子さんの言葉は、改めて外界の制約を超えて果て無く広がる内なる心の可能性を想起させ、背伸びするための勇気をくれるものです」

 つづいて、第2位には、夏の甲子園で東北勢初の優勝を飾った仙台育英高校の須江航監督のコトバが選ばれました。