積極的に動く層と、動きが遅い層で
就活の「二極化現象」も

 ただし、これらの数値は調査モニターがベースとなっており、就活生の中でも積極的に動いている層が多い。一方、コロナ禍で周囲から就活についての情報をあまり得られず、動きが遅くなっている学生もいる。

 ダイヤモンド・ヒューマンリソースの調査(22年6月末時点)によると、23年卒の学生が受験した企業数は平均15.2社でほぼ前年並み。22年卒はオンラインが主流になったことで社数が平均1.6社増えており、増加傾向が続いている(下図参照)。

 そして、内定した企業数も平均2.68社と前年より0.18社増加した。ただし、「1社」内定が1.7ポイント減、2~4社内定も微減となる一方、5社以上内定を獲得した学生が15.0%と前年比4ポイントも増加している。早めに動き始めて多くの内定を獲得する層と、そうした流れに乗り切れずに苦戦する層とで「就活の二極化」現象が進んでいる。

 足元では世界的な金利上昇やウクライナ戦争の影響で、円安やインフレなどの不確実性が高まっており、企業業績には不透明感が漂い始めた。しかし前述の通り、中長期的な事業の継続性や成長を考えれば、多くの企業にとって優秀な人材の確保は不可欠だ。

 最近では「人的資本経営」がクローズアップされており、企業の採用意欲はむしろ高まっているといっていい。また23年卒がそうであったように、大手企業でも追加募集を実施するなど採用活動が長期化、複線化している。総じて学生に有利な「売り手市場」の傾向が、今後も続くと思われる。

 ただ、就活はこれから始まる社会人としてのキャリアの入り口にすぎない。コロナ禍や国際情勢の不安定化を鑑みると、社会や経済の変化は年々激しさを増し、変化のスピードも速くなっている。

 こうした時代を表すのが「VUCA」というキーワード。次の単語の頭文字をつなげたものである。

V=Volatility(変動性)
U=Uncertainty(不確実性)
C=Complexity(複雑性)
A=Ambiguity(曖昧性)

 VUCAは個人のキャリアにも当てはまる。これまで多くのビジネスパーソンにとってキャリアは会社任せでよかったが、これからは会社がずっと安泰とは限らない。自分自身でキャリア形成を考え、生き抜いていく必要がある。