デザインの4つの適用領域で見る意味のイノベーション

 マンズィーニはソーシャルイノベーションにデザインを持ち込んだ第一人者であり、ベルガンティがミラノ工科大学において経営学の教授であったときのデザイン面でのメンターでもあります。

アイデアが溢れる時代のイノベーションに求められる「センスメイキング」の力とはEzio Manzini Design, When Everybody Designs
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 チャートではデザインの適用範囲が便宜上、4つに区分されています。実際にはこれらの区分が相互に混ざっていますが、左側が問題解決であり、冒頭のイノベーションの分類であれば、「目的地へたどり着く方法の改善」に相当します。右側がセンスメイキングの領域です。そして上半分が専門家、下半分が非専門家のエリアです。

 マンズィーニはこれら四つの領域をオープンループとして巡るのが現代のデザインであると説明しています。一方、ベルガンティもセンスメイキングの重要性を強調しながら、センスメイキングは問題解決と相互に行き来して進めていくものだと語っています。具体的問題と抽象的思考の往復ともいえます。ですから、両者共に幅広い活動を鳥瞰しているという点で同じです。

 あえて言えば、この十数年間、左側の領域に多くの経営資源が割かれてきたが、右側に対しては同様の扱いをしてこなかった。センスメイキングがなおざりにされていただけでなく、そのアプローチ手法も未開拓であったと『突破するデザイン』の中でベルガンティは指摘しています。イノベーション自体をイノベーションする必要がある、と。だから、意味のイノベーションに力を入れようと人々を刺激しているわけです。

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