総予測2023#39Photo:PIXTA, JIJI

2023年春、全国各地で鉄道運賃が改定される。安易に鉄道運賃に手を付けることはほぼタブー視されてきたにもかかわらずだ。しかも今回の値上げラッシュはまだ序の口である。特集『総予測2023』の本稿では、鉄道各社の鉄道運賃と航空会社における事業構造の大転換に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

全国各地でタブーに触れる運賃改定
JR東・JR西・東急・近鉄の本気

 コロナ禍で大打撃を食らった鉄道や航空は需要と業績の回復が進むが、これに甘んじれば負け。故に鉄道は運賃、航空は非本業が大きく動く。

 ANAホールディングス(HD)や日本航空(JAL)など国際線を飛ぶ航空会社は、水際対策で旅客需要の回復が鉄道より遅かった。それでも国際線航空券は稼ぎに貢献した。世界の航空会社が人員リストラを行ったことなどが影響し、需要回復に供給が追い付いていない。燃油費高騰によるコスト高はもちろん、需給逼迫もあって航空券代が高騰したのである。

 航空会社は需要に応じて航空券の価格をコントロールして稼ぐ腕を競う。対して日本の鉄道運賃は、実質固定。国から認可された上限運賃を勝手に超えられないからだ。

 安易に鉄道運賃に手を付けることはほぼタブー視されてきた。にもかかわらず2023年春、全国各地で鉄道運賃が改定される。

 大半はバリアフリー化に投資する目的で認められた10円の値上げで、本気の勝負ではない。これに紛れて鉄道のリーダー的存在である東日本旅客鉄道(JR東日本)や西日本旅客鉄道(JR西日本)、東急電鉄、近畿日本鉄道などはこれとは別の運賃改定も行う(次ページ表参照)。こちらに鉄道会社の本心が表れている。

次ページでは、運賃における鉄道会社の本心を明らかにする。また、航空一本足からの脱却を目指すANAHDとJALが非航空分野で繰り広げるバトルを占う。