総予測2023#40いしい・けいた/1960年生まれ。83年早稲田大学法学部卒業、伊藤忠商事入社。同社エネルギー・化学品カンパニープレジデントなどを経て2021年6月から現職。 Photo by Masato Kato

商社で「非資源ナンバーワン」を掲げる伊藤忠商事は、円安と資源高の追い風に乗り切れていない。2023年3月期の純利益予想を8000億円に上方修正したものの、前期と比べ減益の見通しだ。どう巻き返していくのか。特集『総予測2023』の本稿では、伊藤忠の石井敬太社長に、23年の投資先とドル円相場予想について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

資源ビジネスの比率が低いのは弱点ではない
伊藤忠には伊藤忠らしい稼ぎ方がある

――2022年の振り返りは。

 ロシアのウクライナ侵攻という、世界経済や政治を激変させる予想外の大事件が起きました。当初は新型コロナウイルス感染拡大の終息で、収縮していた経済の急回復に供給が追い付かず、物不足でインフレが起きることは想定していました。ただしそれも一時的で、数カ月程度で徐々に解決できると考えていたのです。

 ところがロシアによる侵攻がサプライチェーンの分断やエネルギー危機を呼んでインフレが長期化し、世界経済低迷のきっかけになっています。

 エネルギーや食料などの分野でも安全保障が語られるようになり、今まで最適だったサプライチェーンが全て崩され、複数持っていないと安心できないという世界に変わりました。

――今期の業績予想は、競合と差をつけられています。

 資源ビジネスの比率が低いという自覚はあります。しかし、弱点だとは思っていません。

 伊藤忠には伊藤忠らしい稼ぎ方がある。バランスの取れたポートフォリオを目指してきたので、資源価格が上がれば他社の方が強いなということは十分に認識しています。

 ポートフォリオのバランスは取れており、景気変動による市況の上下動への耐久力はある。特定分野に依存することなく各事業が稼げており、一過性収益を除いた基礎収益は順調に増加しています。

円安の進行で「日本は安いので投資を促進したい」と明かす石井社長。次ページでは国内の投資候補と23年のドル円相場予想について石井社長に語ってもらった。