このアットスリーは、BYDが独自開発した「ブレード電池」を搭載、EV専用のプラットフォーム「e-Platform 3.0」を採用し485kmの航続距離(WLTC値)を実現させた。今年2月に中国で販売を開始した後、BYDの世界戦略EVモデルとしてオーストラリアやタイなどのアジア太平洋地域でも発売され、10月末までのグローバル累計販売は14万3000台に上っている。加えて日本市場への参入とともにドイツ、フランスなど欧州9カ国での販売を決定しており、ユーロNCAPの安全評価で最高評価の五つ星を獲得するなど高い安全性が裏付けられている。

 日本市場ではこのアットスリーを第1弾として、23年中頃にコンパクトEVの「ドルフィン」、23年下半期にセダンEVの「シール」の計3モデルを販売する予定だ。

 BYDが開発したブレード電池はリン酸鉄リチウムイオン電池で、これまでの主流だったニッケル、マンガン、コバルトを使う三元系リチウムイオン電池に比べコストが2割程度安いとされる。電池セルを細長い刃のように薄くして体積を従来比で半分以下にした。セルの重量エネルギー密度と電池パックの体積エネルギー密度を高めたことでエネルギー密度全体は50%向上し電池システムの効率も3割改善したという。これによってアットスリーの価格引き下げが実現できたという。

 ところで、世界的に見ると、EVシフトが加速しているのは中国と欧州であり、BYDが母国市場から欧州での拡販戦略を急ぐのはわかるが、なぜEV比率が低い日本乗用車市場に参入するのか。