このように、中国BYDの日本市場攻略は、テスラやヒョンデなどが基本的にオンライン販売で攻めているのに対して、オーソドックスなリアル店舗の全国ネットワークを形成することを重視している。日本事業展開を成功させるには、販売ネットワーク・品質管理・アフターサービス・サポートの一気通貫の体制が必要との考え方があるからだ。

 そのため、店舗イメージの統一や、50kW級の急速充電器を各店舗に設置し顧客の自宅への充電器設置のアドバイスも必須としている。また、新車供給体制も、中国の常州・長沙両工場から出荷し上海から海上輸送で横浜大黒ふ頭(完成車PDI/パーツ保管)へ納車に至る流れを確立。車両販売・アフターサービスは販売店のスタッフを通して確かな顧客体験を提供すべくBYDアカデミーでの教育を徹底させ、リアル店舗でBEVカーライフをサポートすることしている。

 さらに、月4万400円のサブスク型リースや「4年10万km」の新車保証、「8年15万km」の駆動バッテリー保証のほか、認定中古車制度やオリジナル補償を付帯したBYD専用自動車保険の設定など、サポート体制も充実させている。

 今や米テスラをしのごうとする中国最大のEVメーカーであるBYDの日本乗用車市場の戦略は、価格戦略とアフターサービスやサポート体制の充実によるリアル店舗全国展開構想が軸だ。これは、確かにテスラやヒョンデのネット直販主体の日本戦略と異なるものである。

 だが、トヨタ自動車の強力な全国販売網に代表される国産メーカー系列販売やベンツ・VW、アウディ・BMWらドイツ勢の「輸入車勝ち組」の販売力にBYDがどれだけ対抗できるのか、それは懸念材料だ。

 加えて、円安の為替動向や中国から供給が十分に対応されず適正な納車ができないのではといった不安、来年スタートする全国22店舗の販売にとどまり将来的に100店舗超の構想が絵に描いた餅になるのではといった問題もある。