さまざまな「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。そんな中、このコロナ禍に出版した著書『ストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。

【精神科医が教える】自己肯定感を高める簡単な方法・ベスト1Photo: Adobe Stock

自己肯定感とは何か

 「自己肯定感」という言葉がよく聞かれるようになりました。

 ただ、自己肯定感が何かというと、定義が研究者ごとに微妙に異なり、自己肯定感を高める方法もさまざまです。

 たとえば、アドラー心理学では、「自己肯定ではなく、自己受容が重要だ」とされています。ネガティブな人が、無理に肯定的な言葉を発したところで、自己肯定感が高まるわけではない、というわけです。

 そのように議論の分かれる「自己肯定感」について、整理しながらまとめてみます。

自己肯定感と自己否定感

 そもそも、自己肯定感とは何でしょうか。心理学事典の定義を引用すると、「自分の可能性を信じ、自分はできるんだという自信を持ち、肯定的に自己を認識すること」と書いてあります。わかったような、わからないよう感じがするでしょう。

 自己肯定感は「高い」「低い」で表現されますが、「自己肯定感が低い」という概念をわかりやすくするなら、「自己否定感」と言い換えればよいでしょう。
「どうせ私なんか」「自分には無理」「自分は生きる価値のない人間だ」と考えさせてしまうのが自己否定感です。

 その逆で、「自分にはできる」「自分には生きる価値がある」「毎日が楽しい」と思わせるのが、自己肯定感です。自己肯定感が高いか低いかではなく、まず「自己肯定感」か「自己否定感」の2つのベクトルで考えると、自分が「どちら寄りの人間か」がよくわかるはずです。

「自己否定感がある人」は、人から褒められたり励まされても、「どうせ本心じゃないし」「無理して言っているに違いない」とネガティブに受け取ってしまいます。仕事で成功しても「たまたまうまくいっただけだ」としか思わず、すべての体験に「マイナス」を掛け算してしまいます

 それでは、他者から承認されても、成功体験として積み上がっていきません。

自己否定感をリセットする方法

「自己否定の世界」の住人から「自己肯定の世界」の住人になるにはどうしたらいいのでしょうか。そのために必要なのが「自己受容」です。

 自己否定感をリセットして「ゼロ」にするのが、「自己受容」です。コンプレックスや欠点、短所を抱える自分、失敗だらけの自分、ネガティブな自分を、そのまま受け入れることです。「今のままの自分でいい」「ありのままの自分でいい」「今のまま生きていい」その感覚が「自己受容」です

 子どもの頃、親から否定されたり、虐待されたりした体験を持つ人は、「自分は生きていてはいけない存在」などと刷り込まれてしまいます。

「自己受容」というのは、「自己肯定の世界」への「関所」みたいなもので、その「関所」を通過しない限り、「自己肯定」へ進むことは許されないようなイメージです。

 自己否定がある人には、どんなアドバイスも意味がありません。まずは、「自己受容」をして、自己否定の世界から抜け出すことが最優先です

「自己受容の4行日記」を書く

 では、実際に自己否定感を持つ人が「自己受容」をするためには、どんなことをすればいいのでしょうか。

 私がおすすめするのは、「自己受容の4行日記」です。

 まずは、1行だけネガティブなことを書きます。それに続いて、「今日あった良かったこと」を3つ書きます。それだけです。

 ネガティブなことを書いて吐き出すのは、ストレス発散になるのですが、そればかりを繰り返すと「ネガティブ記憶」「ネガティブ思考」が強化される恐れがあります。そこで、「1行ネガティブ」とセットで「フィードバック」を書いて、自分を認めるようにするのがコツです。

「自己肯定感」と「自信」の違い

 自己肯定感と関連するのが、「自信」です。「自信を持って!」という励まし方がよくされますが、気の持ちようだけでは自信はつきません。自信の概念を整理しておきましょう。

「自信」は、次のように理解するとわかりやすいでしょう。

【自信の公式】 自己肯定感 × 経験 = 自信

 つまり、自己肯定感を高め、成功体験を積むことによって、「自信」が生まれるということです。

 たとえば、テストでよい結果が出たとしましょう。

 自己肯定感があると、

頑張ったから結果が出た
勉強してよかったな
この調子で、次も頑張ればまたいい点数が取れそう

 と、前向きにとらえて自信をつけていきます。

 一方で、自己否定感のある人は、「たまたまヤマが当たっただけだ」などと、せっかくの「成功体験」を否定的にとらえるので、「自信」として積み上がりません。テストの「結果」よりも、「受け取り方」のほうが重要なのです。

 自己肯定感を高めるもっとも大きなメリットは、「新しいことにチャレンジできるようになる」ということです。

 行動が積極的になり、自己嫌悪が減り、劣等感も消えていきます。やがて自分に自信がつき、恋愛ができたり仕事もうまくいくようになるでしょう。

 すべてを否定的にとらえていると、人生を楽しめないし、幸せに生きることもできないのです。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に27万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ90万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。