日本の「中央に位置した人の可処分所得額」は450万円程度であるから、この定義を援用すれば、可処分所得225万円が貧困ラインとなる。むろん、日本の特性、都市と地方の格差、あるいは財源などを考慮して、異なる基準を設定してもいいし、単身者と子どもを持つ世帯の貧困ラインを別にすべきかもしれない。その設定基準こそが、その政党の思想を体現することになる。ともあれ、その設定ライン以下の人々が貧困層である。

 次に、彼らをいかにしてその貧困ラインより上に引き上げるか。各党はその政策を競うことになるが、この観点から現在の社会保障制度を見れば、さまざまな不備が浮かび上がる。

 例えば、現在の日本の課税最低限度額は、単身者の年収115万円、夫婦こども二人の世帯ならば325万円である。仮に、単身者の貧困ラインを200万円とする。貧困ラインを下回る年収の人から税金を徴収するのは本末転倒だから、課税最低限度額を引き上げなければならないことになる。

 仮に、年収150万円の単身者がいるとしよう。課税最低限度額の引上げによって、所得税はゼロになった。では、貧困ラインとの格差50万円をどう埋めるか。米国などで導入されている「給付付き税額控除」は、所得が課税最低限度額を下回った場合、所得税がゼロになるだけではなく、納めるべき税金がマイナスになったとして還付される。この制度を使えば、貧困ラインへの引上げの一助になる。

 ところで、非正規社員は企業の社会保険には入れず、国民健康保険に加入する。その保険料が年間50万円かかるとしよう。この場合、年収が200万円の貧困ラインに届いていても、保険料を払っただけで可処分所得は150万円に落ちてしまう。かといって支払わなければ、無保険者である。この問題をどう解決するか。

 企業の社会保険に加入できる正社員であっても、低所得者にとって保険料の支払いは負担である(分担する経営にとっても、零細企業にはきつい)。年収150万円の単身者の保険料率が20%であれば、保険料は30万円だ。そこで英国では、社会保険に基礎控除を導入した。基礎控除額を100万円とすると、保険料率は年収との差額である50万円にしかかからず、負担は10万円ですむのである。