アベノミクスで顕著な円安・ウォン高に
為替変動は韓国に打撃を与えるのか?

 アベノミクスによる金融緩和策の積極的な促進の効果もあり、足もとの為替市場で円安傾向が進んでいる。今まで円高傾向に悩まされてきたわが国の輸出企業にとって、円安の進展は大きなメリットだ。

 それに伴い、主力輸出企業の収益状況の改善期待を背景に、株価も堅調な展開を続けている。昨年の12月以降、わが国の株式市場は世界最強の様相を呈している。

 ドル・円の為替レートにどうしても目が行きがちなのだが、もう1つ忘れてはならないことがある。それは、韓国のウォンが対円で強含みになっていることだ。ウォンの為替レートを見ると、まだリーマンショック以前の水準には戻していないものの、直近のウォンの安値であった2011年の秋口と比べると、15%以上ウォン高・円安になっている。 

 こうしたウォンの強含みにより、韓国の自動車や造船、鉄鋼などの産業分野で収益力の低下が顕著になっている。通貨安を背景に快進撃を続けてきた韓国企業は、重要な転換点を迎えつつあると言える。

 最近、韓国のメディアなどでは、「円安・ウォン高を招いているアベノミクスが、韓国企業に打撃を与える」との批判記事が出ている。

 収益力が低下する企業の中で、強力な競争力を持つサムスンは、今や米アップルに代わって世界を代表するIT企業にのし上がっている。同社は、依然として強力な競争力を背景に圧倒的な収益力を誇っており、わが国の電機メーカーとの差はさらに拡大している。

 日韓の貿易関係を見ると、わが国の貿易黒字と韓国の貿易赤字の体制が続いている。韓国は、わが国の機械などの資本財・主要部品の主な輸出先である。そうした状況を考えると、ウォン高による韓国経済の後退を単純に喜ぶわけにはいかない。わが国の産業界にとっても、マイナスの影響が顕在化することが懸念されるからだ。