連休は5年先まで決めて、1ヵ月以上先の仕事はいれない
――では、「仕事が落ち着いたら休もう」なんて思っていたら一生9連休なんてとれないと?
四角 はい。だから僕は会社員時代に、有給休暇や振替休日はすべて使い切って、連休の予定は5年先までブッキングして、常に9連休を狙っていました。逆に、1ヵ月以上先の仕事のアポは極力入れないようにしていました。仕事の状況は常に変化しますから。
「9連休なんて無理」と思った人は、本の中でそのノウハウをカレンダー付きで公開しているので参考にしてほしいです。祝日が1日でもあれば、残りの平日4日間に有休を投下することで自動的に前後2回の週末(4日間の休日)が加わり、9連休が実現します。祝日が2日あれば、たった3日の有休だけで9連休です。このバカンス思考を持って働くかどうかで、仕事の実績と人生の幸福度の両方で、大きな差が生まれると言い切れます。
――連休はどんな過ごし方をされていましたか?
四角 ニュージーランドに移住したかったので、9連休は必ず現地に飛んで、移住候補地の静かな湖畔の街に滞在していました。計15回も下見したんです。
現地で湖を眺めながら「もう日本に帰りたくないな」と思ったりするのと同時に、「これでまた1年、仕事をがんばれるぞ!」と、完全リフレッシュした気持ちで、仕事へのモチベーションが爆上がりしてたんですよね。
そして、3連休や4連休は、関東甲信越エリアで登山やキャンプ、または北海道の阿寒湖にフライフィッシングに行き、休み明けにはハイパフォーマンスで働いていました。
予定にメリハリをつけず働き続けながら、「今日から集中するぞ!」と奮い立たせようとしても、できないですよね実際。少なくとも、精神力がない僕には無理でした。逆に、バカンス思考が習慣化すると、やる気は自動的に高まります。
たとえば、毎週末をしっかり楽しむ習慣が身につけば、「さあ明日から5日間がんばるぞ!」と日曜夜に自然に思えたり、3連休以上のバカンスを定期的に取れるようになると、「明日からまた仕事に集中するぞ!」と、やる気スイッチが自動的に入るようになるからです。
何より、仕事より先に連休を決めることで自然に、仕事スケジュールに区切りが発生し、メリハリを付けやすくなります。カレンダーに入れたバカンス予定が目に入るたび、「この日まで仕事をがんばろう!」と気分を高めて集中力を上げられるので、圧倒的な時短にもつながります。
――私も旅行が好きなのでわかります。金曜日の夜の過ごし方で土日の充実度が変わるというアドバイスも、今まで意識していませんでした。金曜の夕方と夜は、飲み会含め仕事関係の予定は入れないことが鉄則で、友人や恋人と食事するのはオッケーなんですね。
四角 自分のための時間だったら、立派な「セルフケアタイム」になるので脳疲労をリセットした理想の状態で週末に入れますから。ただ深酒すると二日酔いや睡眠不足になって土曜日に影響します。働く人には、「週末は金曜の夜から始まっている」という思考習慣を身につけてほしいんです。土日に小旅行を楽しみたいなら、なおさらですね。
僕の会社員時代、週末に釣り旅やキャンプに行くときは、土曜日に出発すると渋滞に巻き込まれやすいので金曜の夕方に出発して、2泊3日に拡張していました。週末を使って韓国や東南アジアに旅行する場合、金曜日に2泊3日分の荷物を持って会社に行けば、夕方以降の便で羽田から出発できますし――ちなみにここでも、本書で解説している荷物の最小化メソッドが活躍します。
月曜日と金曜日は仕事を軽くする
――平日はどうしても月曜と金曜に仕事が溜まりがちですが、一番働くべきは火曜と木曜と書かれていて、「今まで全然メリハリない生活していたなぁ」と反省しました。
四角 月曜日から気持ち良く仕事するためには、日曜日の夕方以降の過ごし方と、月曜午前中の仕事を軽くすることがポイントです。具体的には、土曜日から日曜の午後までしっかり遊んだら、日曜の夕方以降は完全リラックスする「セルフケアタイム」にして早めに寝ます。翌日月曜にスッキリ起きたあとも、午前中の仕事が少ないことで気持ちに余裕を持てるので、ブルーマンデーを回避できるんですね。
さらに言うと、月曜の午前中にアポとやるべきことをゼロにできれば、「週末の拡張」に活用できます。これは前述の、「週末を2泊3日に拡張」すべく金曜の夕方以降に仕事を入れない方がいい理由と同じです。
首都圏だと、土曜の朝以上に、日曜の夕方の高速道路は長距離渋滞しますが、月曜朝であれば回避できます。僕は隙あらば、金曜中に出発して月曜に半休を取り、本来は1泊2日にすぎない週末を、3泊4日というプチバカンスに大拡張していました。
月曜と金曜を軽くする代わりに、火曜と木曜は激しく働く。ただし、平日の休息日である水曜は軽めにすべく心がける。そうやって、平日5日間にも明確なメリハリを付けることで、ダラダラ勤務をゼロにして、生産性を極限まで高めていく。
――私も、今まで考えたこともないことばかりで目からウロコでした。
四角 10回のミリオンヒットは、僕独自のメディア戦略やブランディング戦術、チームマネジメントの成果と言われますが、やはりその仕事ぶりを支えたのが、このバカンス術含めた、本に書いた特異なスケジューリング技法です。これを愚直に徹底し続けたことで、意図せず、高いパフォーマンスを10年にわたって持続できたことが大きかったですね。
モノや情報、タスクやスケジュール、人付き合いや習慣の、無駄を最小化できるからこそ、身軽に生きられる。楽しい時間を最大化できるからこそ、仕事のストレスを減らせるし、仕事で成果も出せる。「ミニマル主義」というと禁欲的だと思われがちですが逆で、楽に働いて生産性を高め、人生の幸福度を高めるための流儀なんです。
ミニマル主義の8ヵ条、いくつ当てはまる?
――おっしゃるとおり、何もかも過剰な状態で何かに追われ、ただ必死にストイックに働くだけじゃ、決していい仕事はできないですよね。
四角 そこに気がついて、本書のメソッドに沿って余計なコトやモノを手放すことができれば、仕事と人生のパフォーマンスが自然に高まっていきます。この本で提唱している8ヵ条も、今までどれほど無駄なことに時間とエネルギーを奪われていたか、気づいてもらうヒントになるはずです。
1, 最も大切なことに集中するために、他のすべてを手放す
2, 身軽さ、自由度の高さ、遊び心が、潜在能力を最大化する
3, 最短時間で最大効果、最少労力で最大パフォーマンスを
4, 仕事を愛し、楽しんで働くことで最高のアウトプットを
5, 心を軽くするために、体の負担と環境負荷を最小化する
6, 上質な成果を出し続け、持続的に働くために暮らしを整える
7, 時間に極端なメリハリをつけてはじめて、人生は豊かになる
8, 仕事は究極の遊びであり、働き方は生き方である
――いつも目の前のことに追われている私は、8ヵ条のどれも実現できてない気がします。
四角 大丈夫です。どれも行動するのに、遅すぎることはありません。僕が体系化したステップを順に踏んでもらうだけで、すべてを体得できる仕組みになっていますから、難しいことでもないんです。さらにその過程で、自分が置かれている混乱状況が客観的に見えるようになります。すると誰もが、「何とかしなきゃ」と本気モードに入れます。
本書のエピローグにも書きましたが、僕たち人間は幸せになるために生まれてきたんです。でも、今の働き方を愛せていないのに、思考停止のまま行動を変えなければ、限りある人生を、「幸せとはかけ離れたこと」に浪費し続けることになります。
今日からミニマル主義を実践することで「命の浪費」に歯止めをかけ、あなたにとって本当に大切な仕事、心から好きなことに最大の時間とエネルギーを投資してほしい。
そんな願いと、実践法を詰め込んだ『超ミニマル主義』をぜひ手にとってみてください。この本を必要とする人に届けることができれば、それ以上の幸せはありません。
【了】
『超ミニマル主義』では、「手放し、効率化し、超集中」するための全技法を紹介しています。
【大好評連載】
第1回 【最も“非生産的”な働き方は何?】仕事を軽くして圧倒的な成果を出すたった1つの方法
第2回 【“ネット依存”が病気の原因に…】「スマホ依存症の人」が今すぐ始めるべきこと
第3回 脳疲労とストレスが激減する、とっておきの「オンとオフの切り替え方」とは?
執筆家・環境保護アンバサダー
1970年、大阪の外れで生まれ、自然児として育つ。91年、獨協大学英語科入学後、バックパッキング登山とバンライフの虜になる。95年、ひどい赤面症のままソニーミュージック入社。社会性も音楽知識もないダメ営業マンから、異端のプロデューサーになり、削ぎ落とす技法でミリオンヒット10回を記録。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住し、湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む。年の数ヵ月を移動生活に費やし、65ヵ国を訪れる。19年、約10年ぶりのリセットを敢行。CO2排出を省みて移動生活を中断。会社役員、プロデュース、連載など仕事の大半を手放し、自著の執筆、環境活動に専念する。21年、第一子誕生を受けて、ミニマル仕事術をさらに極め――週3日・午前中だけ働く――育児のための超時短ワークスタイルを実践。著書に、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』(サンクチュアリ出版)、『人生やらなくていいリスト』(講談社)、『モバイルボヘミアン』(本田直之氏と共著、ライツ社)、『バックパッキング登山入門』(エイ出版社)など。