その後もロシアによるウクライナ軍事侵攻などによる原料不足、物価高騰など逆境は続いているが、全国的にホッピー人気は根強い。

 こうした中、石渡社長は自らの確固たるカラーをホッピー史に刻むべく、第3のストーリーの発信に最も注力している。

技術はまねされても
企業風土はまねできない

 三つ目のストーリーは、社員の「育成・管理」だ。ホッピービバレッジのような中小企業の場合、社員個々人の働きがモロに業績に影響する上、優秀な人材が一人でも欠ければ甚大な痛手を被る。また、大手企業にはない育成システムや人材管理方式を周知できれば、ホッピービバレッジの企業イメージも向上する。

「競合の大手他社さんと弊社は、企業規模でいえば“巨人とアリ”ほどの差。技術面では勝てるはずもありませんが、弊社の強みは“人財”です。主戦略は、新卒採用と人財育成。技術はまねされますが、企業風土はまねできない。そして企業風土をつくるのは社員一人一人です。企業理念にのっとって、お客様やビジネスパートナー様の幸せの実現のお手伝いをさせていただくためには、まず社員が幸せでなければ説得力もありません。社員が幸せなら、お客様がホッピーでハッピーになれる。そうした好循環を生んでいくためにも、社長自らがフィロソフィーを社員一人一人に直接伝えていくことが大切だと思っています。

 コロナ期のいまは不安やストレス、孤独を感じやすい時期。企業にとって社員のメンタルヘルスケアは最重要課題です。弊社でもコロナ発生前の18年から“健康経営”を掲げて、定期的に血液検査や管理栄養士の栄養・食事指導などを実施し、一定の効果も得てきました。健全な心は健全な肉体に宿ると考えています。人生100年時代、先が読めない複雑な時代の中で、社員の幸福度を高めていければいいですね」

トイレ掃除を巡り
ネットで炎上の過去も

 しかし、人材の育成・管理という面では、同社がブランディングに成功しているとは言い難い。

 同社の採用ページには「環境整備」の一環として、社員が素手に近い状態でトイレ掃除を行う写真が公開されている。「トイレ掃除で心を磨く」といった美徳に基づく教育方針だが、このことが18年に炎上。「食品企業が不衛生だ」「パワハラだ」といった声が相次いだ。