どんなスキルが「自分に」必要かを
見極めていく

 ジョブ型雇用の導入が進めば、スキルアップは個人の責任になり、メンバーシップ型雇用で定番であった研修が減っていくという見方があります。確かに、新卒入社数年毎の一斉研修というケースは少なくなっていくかもしれません。

 一方で、リスキリングといった、例えばIT関連など特定スキルの更新等の機会を会社が提供することが増えています。

 日本においてはいまだ転職者が増えず、人材が十分に流動化していないという事情があります。企業は、必要な人材を必要なときに労働市場から得ることが容易でないため、現有社員を再教育して、組織としての競争力を向上させていかなければならないのです。

 個人としても、スキルアップに受け身の姿勢ではいけません。環境変化は激しく、事業の再編頻度は多いのです。「働きがいのある仕事を続ける」という意味からスキルアップは大切。将来を考え、今後どんなスキルが「自分に」必要かを見極めていくことが必要です。

 今後、会社が提供する研修機会は、一方的に付与されるものから、多様なメニューの中から個人が選択する形へ変わっていくでしょう。

 自律的なキャリア開発の姿勢を持ち、自分が将来ありたい姿や自分の会社や事業の先を見据え、どんな能力が必要かを自らの目利きで選んでいくことが求められます。

 転職を見据えた場合だけでなく、社内の労働市場において自分の価値を高めるためにも、自発的に能力を磨くことは大切なことです。

働く価値観の多様性が
顕在化するようになった

 働き方に関する価値観について言えば、その本質はあまり変わっていない、と私は考えています。

 従来は、働く人であれば多くの人に親和性が高いとされるモデル、例えば「猛烈に働いて、最短で管理職になり、役員になれれば勝ち組」といった像がありました。

 ただしその中でも、「プライベートな時間を仕事に侵食されたくない」「仕事は生活の糧を得る手段」など、仕事に対する価値観は、潜在的にはさまざまでした。その価値観の多様性が近年、顕在化してきた、と私は考えています。

 会社においても、既存事業で収益を上げる人、新事業を開発する人、組織の力を引き出す人など、多様なキャリアを評価するようになっています。

 個人も、プライベートな時間とバランスを取りながら、どのように仕事に関わっていきたいかを、以前に比べて躊躇なく表明できるようになってきています。