16年2月に行われたFIFA会長選で、インファンティーノ氏はW杯の出場チーム数拡大を公約の一つに掲げて出馬。本命のシェイク・サルマン候補(バーレーン)を破って当選した。

 そして、17年1月のFIFA評議会で公約が実行に移される。26年大会が3カ国の共催に決まる1年半近く前に、出場チーム数が「48」に拡大されたメリットをFIFAはこう説明していた。

「ワールドカップに参加する国や地域が増え、放映権料をはじめとする収益も増える。この案はサッカーを世界中に発展させるもので、W杯は単なる競技会から社会的なイベントになる」

 大陸ごとの出場枠は、カタール大会はヨーロッパが「13」、南米が「4.5」、北中米カリブ海が「3.5」、アフリカが「5」、オセアニアが「0.5」、アジアが「4.5」、そして開催国だった。

 これが次回大会ではヨーロッパが「16」、南米が「6.5」、北中米カリブ海が共催国を含めて「6.5」、アフリカが「9.5」、オセアニアが「1.5」、そしてアジアが「8.5」とそれぞれ増える。

 ここで記す「0.5」は、大陸間プレーオフに回るチーム数を意味する。つまりアジアは最大で9チームの出場が可能となり、これまでの実績を上回ると言っていい出場枠を得た。

 そして収益増の中心としてFIFAが期待するのが、人口に比例する形で莫大な経済規模を持つ中国やインド、常連のサウジアラビアやイランを除いた中東の産油国となる。

 カタール大会では代表チームこそ出場していないものの、中国のコングロマリット企業「大連万達グループ」がアディダスやコカ・コーラ、ビザカードなどとともにFIFAのパートナー企業に名を連ねた。画面などを介して「WANDA」の広告が、否が応でも視界に飛び込んできたはずだ。

 さらにW杯スポンサーでは電気機器メーカーの「ハイセンスグループ」、乳製品メーカーの「蒙牛乳業」、スマートフォンメーカーの「ビボ」と全体の3分の1を中国企業が占めた。中国企業がカタール大会に投じた資金は日本円で約1900億円と、アメリカを抜いてトップに立っていた。

 実際に中国代表がW杯に出場すれば、同国企業の参入がさらに見込める。サッカーの世界的普及をうたいながら、露骨な拝金主義が見え隠れする出場チーム数の拡大。インファンティーノ会長の改革には、ヨーロッパを中心に「長い目で見れば、W杯の価値を下げる恐れがある」と批判が集中した。

 W杯の価値を下げる恐れとは、二つの意味を持っていた。一つはW杯レベルに達していないチームが多く出場した結果として、グループステージで一方的な試合が多くなる点。そしてもう一つが、グループステージそのものの公平性が大きく損なわれてしまう点だ。