全国20カ所の大仏がある寺に問い合わせてみた
ここまで来ると、日本で年々増えている東南アジア移住者と大仏の関係がますます気になってきた。そこで、全国各地で有名な大仏があるお寺やその他の施設20カ所近くに電話して尋ねてみた。すると、おぼろげながら実態がつかめてきた。
「数年前からベトナム人が来ている。元日は多い」「ミャンマー人も来ている。伝統衣装で大仏の前で手を合わせている」(東京・多摩大仏のある寶光寺)、「それほどではないが、たまにベトナム人やミャンマー人が来る。ミャンマー人は10~20人くらいの団体で年に2~3回来る」(岐阜大仏のある正法寺)、「5年ほど前からミャンマー人が来るようになった」(愛知県の聚楽園大仏)、「ミャンマーの人は多いです。寄付する人も中にはいる」(千葉県の日本寺大仏)などの声があった。
特に興味深かったのが、北海道にある佛願寺大涅槃聖堂の模様だ。「コロナ前から、タイ人や職業訓練で日本に来ているミャンマー人が結構来ていた。(東南アジア系の)割合は全体の1~2割ほど」と担当者は証言する。日本には大仏に占める涅槃仏自体の割合が低めなのだが、佛願寺はその数少ない例外だ。
その他電話取材で分かったこととしては、ベトナム人など東南アジア出身の参拝者は、地方の大仏しかないスポットに旅行として遠出するというよりは、小旅行的に公共交通を使ってグループで行けそうな都市圏近郊などにやってくることが多いということだ。これは南蔵院、牛久大仏、佛願寺いずれも共通していた。実際、涅槃仏があるお寺でも、都市部から遠く離れた辺鄙(へんぴ)な場所では東南アジア移住者が大挙してやって来ている形跡はない。
また、ベトナム人やミャンマー人にとっては旧正月やミャンマー暦の正月の方が慣習的に重要だが、日本に移住してきた彼らはその時期には仕事がある。そのため、日本の正月に合わせて休みになる年末年始、とくに正月に参拝者が多いということのようだ。