「インターンシップ」に
こだわらない方がいい
新ルールで起き得る変化については、まだ不明なことも多い。ただ正式に「インターンシップ」と名乗るためには厳しい条件が設定されており、クリアできる企業は当面、一部にとどまりそうだ。
もちろん、大部分の企業が実質的な企業説明会だけの「イベント」を開催し続け、その場で非公式に採用選考が行われる状況は今後も変わらないだろう。
学生はこうした実情を理解し、短期であってもできるだけ多く参加した方がよい。「インターンシップ」ばかりにこだわっていると、就活の幅を狭めてしまうことになりかねない。
ちなみに足元でインターンシップへの取り組みは、中小企業の間にも広がっている。大企業ほど人やお金をかけられない分、独自の工夫をしているところもある。
システム開発、ソフトウエア開発を手がけるMINOSYS(ミノシス)の例を紹介してみたい。
同社は社員数115名。開発部門、管理部門、営業部門があり、4年前から営業部門で毎年1、2名のインターンを受け入れている。人事担当の元美羅氏は次のように語る。
「中身は超実践的で、自社オリジナルの研修資料による座学から電話対応、同行訪問まで含め、学生にはひと通り経験してもらっています。インターン中は時給換算で給与を支給します。最後に発表会を行い、そこで内定を出します」。なお、インターンの告知は社員の出身大学を優先している。
インターンシップでは、文系と理系の違いも気になるところだ。
近年、業種を問わずDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の採用ニーズが高まっており、IT関連学部の学生はインターンシップが採用に直結しやすい。この点について、東海大学情報理工学部情報科学科の高雄元晴教授は語る。
「私の研究室には学生と院生が多いときで50人くらい在籍しており、就職のサポートも行っています。昔は学校推薦が主流でしたが、現在は学生が自ら動くことが求められており、多くの学生がインターンシップに参加しています」
理系のインターンシップなので3、4週間程度のプログラムを提供する企業もあり、そのまま内々定が出ることもある。ただし、理系といっても採用基準は人物本位で、かつ即戦力が重視される。
入社後の配属先については学部卒か院卒かで差があるところも多い。大手企業の研究開発部門では7、8割が修士か博士となる。
これからのキャリアは
偶然をチャンスと捉える
人生100年時代を迎え、学生は自分のキャリアをどのように組み立てていくかが、就活の段階から問われるようになる。新卒で入社した会社で定年を迎えるケースは、むしろ少数派になるだろう。そう考えれば、インターンシップをはじめ就活に取り組む意識やスタンスも変わってくるはずだ。
キャリア論の分野でよく知られるのが米国の心理学者、ジョン・クランボルツ教授の提唱した「計画的偶発性理論」だ。
それによれば、仕事において成功している人の8割が、予想していなかった偶然の出来事が成功のきっかけになったという。
翻って、最近は「入社後の配属ガチャが思ったよりも深刻」という若者の話を聞く。しかし配属ガチャ、上司ガチャ、さらには親ガチャという言葉は、下手をすると思考停止につながりかねない。
仕事を含め自分の思うようにならないことは、長い人生でいくらでも起こり得る。置かれた状況で自分はどうするのか、何ができるのか、偶然であってもチャンスと受け止める姿勢が大事だ。
また、キャリア形成には「山登り型」と「川下り型」があるといわれる。社会が安定していた時代には10年後、20年後の目標を決め、途中のマイルストーンも細かく設定して登っていく「山登り型」が適していた。きちんと計画を立てることで安心感も得られる。
しかし、これからの時代に適しているのは「川下り型」のキャリアだろう。激流を筏で下るように目の前の仕事に主体的に取り組みながら、経験やスキルを身に付けていくのだ。自分の得意分野やモチベーションを発見したら、山登り型に切り替えることもできる。
キャリアの入り口であるインターンシップも「この業界でなければダメ」「この会社しか眼中にない」といった発想ではなく、柔軟なスタンスで臨みたい。