クリストフ・ウェバー社長兼CEOクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者) Photo:Diamond
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 武田薬品が経営のグローバル化との美名のもと、クリストフ・ウェバー社長を筆頭とする外国人幹部らの“進駐”を許してから8年の歳月が流れようとしている。この間、シャイアーの買収によって見かけ上の巨大化は進み、研究開発パイプライン上の化合物リストも数だけは増えた。本社に集うボードメンバー「タケダ・エグゼクティブチーム」(TET)の顔触れは陵谷遷貿の観を呈している。

 ところが中身を精査すると、創薬力にしても経営力にしても、とても「世界一流」とは呼べない悲しい現実が見えてくる。武田からタケダへの経営改革は、依然として道半ばなのだ。しかも最近は、「日本初のメガファーマ」をめざすという改革の志すら鈍り、経営上の数々の反省点を韜晦の術を駆使しながら忘却の淵底へと追いやろうという傾向が、多くの幹部に目立つ。発せられる言葉は同時通訳を介するという悪条件を踏まえても寒々しく上滑りで、その多くに気節は感じられない。

 改めて簡単に振り返ろう。武田は2兆円を投じた11年春のスイス・ナイコメッドの併呑で、案の定、ガバナンス面での“腹痛”を起こした。そこで、救急対応可能な医師として、医薬品業界ではほぼ無名であったウェバー氏を14年4月に迎え入れた。期待されるところは主力の医療用医薬品事業の体質を、国際展開に資するよう治療することにあった(大型M&Aは十分条件であっても、必要条件ではなかった)。国際戦略4製品の成功で図に乗ったものの、実態は、井の中の蛙で大海を知らなかった同事業を、心身ともに根本から叩き直せるか。氏のリーダシップが社内外から注目された。

 しかしウェバー社長は多くの武田関係者の、さらに言えば同社長にナイコメッドの後繕いを委ねた長谷川閑史前会長の「期待」に応えなかった。功を焦ったのか、いまから思えばポストディールに熟考を重ねたとは思えないシャイアーを高掴みしたために、腹痛が収まるどころか逆に、財務を中心に会社のバイタルサインまで悪化した。そこで今度は、数値を急ぎ改善するため過酷な減量を断行するに及び、ここにきて漸く小康状態を確保するに至った、というのがタケダの病歴である。