韓国は平和のために
圧倒的に優位な戦争準備

 尹錫悦大統領は、昨年10月1日の国軍の日の演説で、北朝鮮の核攻撃に対する反撃力の強化を打ち出し、「対北朝鮮の偵察監視と打撃能力を画期的に補強する」「(北朝鮮が核を使用すれば)韓米同盟と韓国軍の圧倒的な対応に直面する」と表明した。

 また、北朝鮮が9月に制定した核の先制使用に関する法令に触れ、「韓国の生存と繁栄を脅かしている」と非難した。それまでの1週間で北朝鮮は、4回の弾道ミサイルを発射していたが、それについて韓国の専門家は戦術核としての使用を想定したミサイルと分析している。

 尹錫悦政権の北朝鮮核・ミサイル抑止の基本は3軸体制と呼ばれるものである。それは具体的には次の3つを指す。

(1)北朝鮮のミサイル・核攻撃を探知した際に、先制攻撃するキルチェーン
(2)北朝鮮のミサイルを迎撃する「韓国型ミサイル防衛」
(3)北朝鮮が核攻撃をした場合、北朝鮮指導部に直接報復する

 ただ、その限界も指摘されており、米国との協力強化が不可欠である。米韓両国は北朝鮮抑止のための共同の努力として「情報共有の強化、非常計画の拡大、そして究極的には模擬訓練を検討している」(米政権当局者)という。

 また、米韓は2018年4月以来中断していた米韓の野外訓練を交えた大規模演習を再開した。大規模演習は昨年8月に再開され、近年にないハイペースで軍事訓練を繰り返している。

 その他、昨年9月には原子力空母「ロナルドレーガン」が韓国に入港、敵の潜水艦との戦いを想定した訓練を行った。さらに昨年10月には米韓の空軍による大規模な演習を行い、ステルス戦闘機F35Bを含む100機余りが参加した。

 これに対し、北朝鮮も米韓の演習を口実に、自らの軍事技術や運用能力を向上させる動きを示している。

 一方、尹錫悦大統領は、北朝鮮無人機による領空侵犯に対し「到底容認できない事件だ」「挑発には必ず厳しい代価が伴うという事実を悟らせなければならない」「平和を得るためには圧倒的に優位な戦争準備が必要だ」「韓国軍は敵に対し、こちらに接近もできないほどの恐怖を与える強軍にならなければならない」と訓示した。

 韓国軍は北朝鮮の無人機の侵入に対抗し、有人・無人偵察機を非武装地帯(DMZ)とMDL北側に送り込み偵察活動を行った。

 北朝鮮は首都圏の前方に長射程砲を配備し、1000発ほど弾道ミサイルを保有しているとみられている。無人機はリアルタイムでの探知・迎撃が容易でないため、攻撃用や自爆用に使用される恐れが常にある。

 韓国軍はイスラエル製の要人暗殺用「自爆キラードローン」を導入し、早ければ1月から運用されることが判明した。

 さらに北朝鮮の無人機に対応するための狩猟用トクスリ(ワシ)部隊を新設、最前方地域の領空を守る案を検討中である。また、北朝鮮の無人機についてはそっくりの複製品を製造中であり、北朝鮮が挑発してくれば同じ型の無人機を大量に投入する作戦を立てていることが朝鮮日報の取材で明らかになった。