金正恩総書記は
韓国を敵と規定

 北朝鮮・金正恩朝鮮労働党総書記は1日、国営メディアを通じて公開した年末全員会議の結果報告で、韓国を「疑いの余地がない明白な敵」と規定し、韓国側を直接狙った戦術核兵器の多量生産と核弾頭保有量の拡大を指示。同メディアは「北朝鮮の脅威は否定し難い現実のものとなっている」と報じた。

「核武力は戦争抑止が第一の任務だが、抑止に失敗すれば第二の使命を決行することになるはずで、第二の使命は明らかに防御ではない別のものだ」とし、核先制攻撃の脅威を増長している。

 北朝鮮は平壌郊外の美林(ミリム)飛行場に最大1万3500人規模の兵力を結集し閲兵式の準備をしていることが分かった。閲兵式では金正恩氏自らが5大目標として開発を公言した固体燃料型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、多弾頭各個軌道再突入体(MIRV)ICBM、新型潜水艦発射ミサイル(SLBM)、無人偵察機などを公開する可能性があるとの見方が出ている。

 防衛省の発表によると、2022年の北朝鮮の弾道ミサイル発射は推定を含め31回、少なくとも59発だった。韓国軍が探知した黄海への発射や距離が極めて短いミサイルも含めると69発に達する。2021年は6発、過去最多だった2019年でも25発であった。1月1日にもミサイルの発射があった。

 北朝鮮が発射したミサイルの少なくとも半数超が実戦を意識した訓練とみられている。

 9~10月にかけて発射した7回のミサイルは、北朝鮮自身が「戦術核運用の訓練」と説明した。当時、米空母が韓国軍との訓練に参加していた。

 11月にも弾道ミサイル、地対空ミサイル、放射砲、戦闘機からの空対地ミサイルを相次ぎ発射した。

 新型弾の開発にも進展が見られた。北朝鮮が最も力を入れたのが新型のICBM「火星17」の開発である。また回避機動するミサイル「イスカンデル」も開発しており、固定燃料を使用するICBMも短期間で開発するという。

 このほかにも、弾頭部が分離してマッハ5以上を保ちながら変則飛行する「極超音速型」や長射程の巡航ミサイル、軍事偵察衛星なども技術開発を進めたと主張する。

 北朝鮮の挑発は、核ミサイルばかりでない。昨年12月26日、北朝鮮の軍事用無人機5機が5年ぶりに軍事境界線(MDL)を越えて韓国領空を侵犯し、ソウル、江華島、坡州(パジュ)の上空を5時間余り飛び回った。韓国軍は攻撃ヘリを飛ばして機関砲100発以上を撃ったが、撃墜に失敗した。

 国防部は、「ソウル上空に進入した北朝鮮の小型無人機1機の航跡は、飛行禁止区域の北端の一部を通過したとみられる」と明らかにした。国家情報院は、同機は龍山(ヨンサン)の大統領室を撮影した可能性があると明らかにした。

 また、複数の軍用無人機は、金浦(キンポ)など京畿道一帯の韓国領空を数時間にわたり侵犯した。