就活の先にあるキャリア形成を
卒業生の協力体制で総力支援
(立教大学キャリアセンターの場合)

 「就職のサポートはあくまでも『点』の支援。学生の人生をより良いものにするには、卒業後の『キャリア』を見通した『線』での支援が必要という考え方で出発しました」

 

 こう語るのは、立教大学キャリアセンター・課長補佐の河崎真理氏(崎は「たつざき」)だ。

 

 2002年に就職課からキャリアセンターに名称を変更。「キャリアの立教」をスローガンに、学生数約2万人という大きな規模でありながら、一人一人と向き合うキャリア支援を行っている。

 

 同キャリアセンターの藤沢瞬氏(「沢」は澤)は、キャリア支援では「あえて教えないこと」も重要と指摘する。

 

 「私たちは、エントリーシートの添削はしません。“良い会社”を教えてほしいと学生から求められることもありますが、当然、教えません。自分自身で考え、自分自身で決めていくことが、何よりも大切だと考えるからです」

 

 避けるべきは「手取り足取り」になることだ。自分で考える「余白」を残すことがキャリア支援のコツであり、そのさじ加減は、多数の「キャリアコンサルタント」資格保有者を有する同キャリアセンターの経験値による。

 

 一方、学生が自分のキャリアを考えるための材料や機会は豊富に提供する。その一つが同キャリアセンター主催の「OB・OG訪問会」だ。

 

 「学生のどんな質問にも答えること」を条件に、各界で働く卒業生がキャンパスに戻り、学生と対面する。年収や昇進のこと、結婚、転勤、育休、転職、起業、海外勤務まで、社会人の本音を聞き、「働く」とはどういうことなのかを考えるプログラムとなっている。

 

 他にも「社会を知る講義」「スタディツアー」など、1・2年生も参加できるプログラムを多数展開。また、在学生の保護者を対象に「教育懇談会」も実施している。懇談会では、同キャリアセンターのメッセージを象徴する、保護者とわが子の「世代の違い」などが話し合われる。

 

 「今の世代は転職する人も増えており、親の『一生勤められる会社なのか』という問いはすでに過去のものともいえる」と河崎氏は指摘する。

 

 「世代の違いを認め、子どもの判断に任せることも必要と説明しています。家族での話し合いでは、子どもの言葉を最初から否定しないでほしいのです。

 

 何かを教えようとするのではなく、肯定から始めて会話を重ねていく、保護者の方にはそんな姿勢で見守っていただきたいと思います」(河崎氏)

 

 スタートアップ企業を嫌い、「安定企業」を薦めがちな親世代。産業構造や働き方が急ピッチで変化する現代において、過去の価値観を押し付けるのは禁物だ。

 

 では、学生が、より広い視野で自分のキャリアを考える上で、大学でのキャリアサポートを活用するメリットとは何か。

 

 「就職支援エージェントや就活動画など、民間企業のサービスはますます多種多様になっています。もちろん、これらを活用するのは良いことですが、大学のキャリアセンターとの違いは、営利目的であること。

 

 純粋に学生の将来のことだけを考えたサポートができるのは、キャリアセンターならではです。十分に活用してほしいと思います」(河崎氏)