香港の「民主化運動」に
キリスト教徒が多い理由

 中国政府の統制が強化され、返還前とは大きく変わりつつある香港。その東アジア屈指の大都会では、仏教と道教をよりどころにしている人が多い。

 香港におけるキリスト教の信者はプロテスタントとカトリックを合わせて人口の1割強にとどまる。しかし、その信仰と民主化運動とは密接に結びついている。デモの参加者でも、キリスト教信者の割合が仏教や道教の信者より高い傾向が見られるのだ。

 香港は19世紀のアヘン戦争の後、イギリス領とされ、その統治下でキリスト教が流入し、社会に深く根を下ろした。小中学・高校の約半分がキリスト教系であることの影響も大きい。香港人の多くがキリスト教系の学校で教育を受けているのだ。

 そもそも香港は、1997年に中国に返還された後も、50年間は一国二制度のもとで高度な自治がとられる取り決めだった。従来の資本主義、生活様式が維持され、中国本土では認められない信教の自由も、言論、表現の自由も保障されるはずだった。

 香港のキリスト教徒の間では、もともと中国政府に対する不信感が強い。

 中国でキリスト教の教会が活動するためには、政府当局に登録しなければならない。そして政府は教会に対して、運営主体を外国人ではなく中国人にするよう要求している。そうした宗教弾圧のような措置が政府への不信感につながっているのである。