政治家は自分の観測範囲でしか語らない
筆者の周りの声との違い

 政治家たちは、しばしば自分の観測範囲で捉えられた事情だけでものを言う。

 政治家がエビデンスに基づかずに見聞きした範囲内で少子化の原因を決めつけてしまうのであれば、筆者も見聞きした範囲の「少子化の原因」をここに書いていいだろう。

 20〜40代の子育て世代から聞こえてくるのは、例えばこんな声である。

「子ども2人が10代になってから3人目の子どもができたが、中絶した。体力的な事情もあるが、上の2人の学費がかかる時期でもあり経済的な不安が一番大きかった」(30代後半)

「女性は専業主婦になりたがると言われるが、周囲で専業主婦になった女性は夫の転勤についていくためや、不妊治療のためにやむを得ずという人ばかり。出産後の女性が正規で仕事を続けづらいことが、『子どもはぜいたく品』という考え方の要因のひとつ」(40代前半)

「高齢世代から『昔は貧しくても子どもを産んで育てたのに』と言われることがあるが、昔は日本の経済が右肩上がりで夢を見ることができた。賃金が上がらないのに奨学金を返して、ローンで家を買って、子どもを育てて……というのでは、よっぽど実家が太い人でないと3人以上は難しい。芸能人やスポーツ選手が3人目、4人目を授かったというニュースのコメント欄に『お金のある人はぜひたくさん育ててほしい』という書き込みが見られるのは、経済的事情が許せばもう1人、2人欲しいと思っている人がいるということだと思う」(20代後半)

「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う。自分はよっぽど価値観の合う相手が見つからない限り、結婚も子育てもしたくないと思っている」(30代後半)

「少子化失言」をし続ける政治家たちの耳に、このような声は届いているだろうか。