セブン&アイ・ホールディングスが1月24日にグループ横断のECサイト「オムニ7」を閉鎖する。2015年にオープンしたオムニ7はEC市場で埋没し、社内では「負の遺産」に位置付けられていた。今後、ECサイトはグループ各社がそれぞれ展開する方針で、巨大流通グループはEC分野で一足早い“解体”が進む。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
オムニ7は1月下旬で閉鎖
カリスマ・鈴木路線と決別
新たなサービスに生まれ変わります――。セブン&アイ・ホールディングスがグループ横断で展開するECサイト「オムニ7」のトップページにはそんな案内が掲げられている。
オムニ7とはグループのスーパーであるイトーヨーカドーや百貨店のそごう・西武、専門店のロフトなどの商品をインターネットで注文・購入できるサービスだ。
オムニ7で購入した商品は自宅のほか、全国約2万店のセブン-イレブンで受け取ることができる。セブン-イレブンの店舗で商品を無料で返品することもできる。
案内によると、オムニ7は1月24日夜をもって閉鎖され、グループ各社がそれぞれECサイトを展開することになるという。案内の中では、「より利便性の高いサービスの提供の実現を目指す」とうたわれている。
そもそもオムニ7の閉鎖は1年以上も前から決まっていた。特集『セブンDX敗戦』の#11『【スクープ】セブン&アイがECサイト「オムニ7」23年にも閉鎖へ、“負の遺産”撤退が遅れた理由』では、セブン&アイが23年冬にオムニ7を閉鎖する計画であることを報じていた。
同記事では、セブン&アイがオムニ7の閉鎖を決断した理由に加え、主力取引先のITベンダーの失策によって起きた大混乱の“撤退戦”の舞台裏を明らかにしている。
閉鎖の理由を端的に言えば、過去の経営路線との決別である。そもそもオムニ7は流通のカリスマ、鈴木敏文前会長の大号令で始まった。だが、鈴木氏がグループを去ると、後継トップの井阪隆一社長はオムニ7を推進しなかった。
井阪体制ではてこ入れされることはなかったものの、7年近くにわたり同社のデジタル戦略の中心にあったオムニ7の閉鎖で、セブン&アイのデジタル戦略は転換が進むことになる。
次ページでは、セブン&アイが目指す「ポストオムニ7」のデジタル戦略の青写真とともに、その課題を明らかにする。また、オムニ7の閉鎖は実はセブン&アイで進むグループの“解体”と不可分の関係にある。セブン&アイが進める構造改革とECの関係性に加え、グループの結束に生じているほころびについても解説する。