大和証券は2021年、高度な専門性を持つ人材を採用するため、「エキスパート・コース」を新設した。その背景には、金融業界における熾烈(しれつ)な人材獲得競争がある。新卒採用と退職抑制の難しさに対して、同社がどう挑んでいるのかリポートする。(ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 大根田康介)
高度な専門分野コース新設で
企業を選ぶインセンティブに
大和証券の新卒採用には、主に職務を限定せず広く人材を採用する「総合コース」と、特定の職務に就くことを前提とした「部門別コース」がある。そんな中、2021年、部門別コースの中に高度な専門性を持つ人材を採用するため、「エキスパート・コース」を設置した。
同社は、新卒の大部分を総合コースで採用している。そこでは基本的に最初は営業店に配属され、そのまま各支店で営業を続ける人と東京本社の本部に異動する人に分かれる。
一方で、証券会社には「クオンツ」と呼ばれる高度な数学的手法で市場分析したり、金融商品や投資戦略を分析したりする人がいる。他に、投資銀行の中でM&A(企業の合併買収)、IPO(新規株式公開)支援、エクイティや債券のファイナンスの支援などを担う人たちもいる。
こうした専門性の高い人材を採用すべく、近年は部門別コースの採用比率を高めていた。
その背景には、以前と比べて金融業界、証券会社に求められる専門性が高まっており、国内・外資系の同業他社や銀行といった他の金融機関との人材獲得競争が激しくなっていることがある。中には他社からの引き抜きもある。
また、少子化で学生数が限られてきており、新卒採用の質も数もこれまでと同じ水準で維持しようとすると、どうしてもその企業を選ぶ大きなインセンティブを学生に感じてもらい差別化する必要がある。
そのため、最初から専門分野の仕事をしたいという学生の受け皿として、部門別コースにエキスパート・コースを新設したというわけだ。