あえて部門別コースに設置した意図は
将来の選択肢のバランスにあり

 新卒の社会人人生はこれから長い。そのなかで、いろいろな仕事をしたいという人も多いだろう。一方で、時間がたつ中で別の仕事をしたいと思う人が出てくるのも事実だ。

 だからこそ、「いろいろな仕事ができるのが非常に大事。当社のような全国拠点、グローバル拠点を持つ企業には、いろいろな選択ができる人事制度が求められている」と同社人事部副部長の柏原幸鳴氏は言う。

 特定の専門分野を突き詰めたいというとがった人材に対し、安心できる人事制度のもとで会社を途中で辞めることなく、長く活躍し続けてほしい。だが、一人の社員が一つの道にキャリアを絞るというのは、企業側もそれなりにリスクを背負う。

 だからこそ、ある程度の専門性が認められなければそういう道は歩めない。本人としても専門分野だけで仕事をずっと続けていくという判断を下しにくい部分もあるだろう。

 一気にジョブ型雇用へとかじを切るのではなく、あえて部門別コースにエキスパート・コースを設置した意図は、ここにある。最初は専門コースだったとしても、いずれは専門分野以外の仕事にも就けるようにしたことで、将来の選択肢のバランスをうまく取れるようにしたわけだ。

 まだ導入して1年足らずだが、22年度の新卒採用ではこれまで来なかったであろう人材が応募・入社してくれたことで、大きな手ごたえを感じている。

 エキスパート・コースへの新卒入社は4人(男3、女1)で、みんな博士課程出身者だった。ただし、博士課程だけに門戸を限っていない。修士課程や学士でも専門性が認められればエキスパート・コースに転向できる。

 もちろん、証券会社はすべてのポジションにある程度の専門性は必要だが、新入社員のときから若手社員向け研修プログラムで一定水準までは教育できる。

 だが、たとえばクオンツに必要とされる数理的素養などは、会社で研修したからといって簡単に鍛えられるものではない。ある程度、学生時代から学び素養があること、またその分野に特化して人生を歩みたいという志がないと高いレベルについてこられない。ここにエキスパート・コース新設のもう一つの狙いがある。