つまり、現在の注目事象がどうなるかを予測するために、クロノロジーを作成し、 類似した出来事がある場合、「どのように発生したのか?」「その変化をもたらした要因は何か?」ということを推理する。

 そして物事の背後にある力、物事をおし進める力である「推進力」(ドライビングフォース)を突き止めて、未来を予測する。

 クロノロジー分析は単に歴史を考察するための手法にとどまってはならない。強い精神力を持って歴史の必然性や因果関係を必ず発見し、未来を予測するのである。

 私は少し前にある企業から、「商品の売り上げと外部環境の関係」について調査依頼を受けたが、最近はインターネット情報が発達しているので、簡単なクロノロジー年表はすぐにできる。

 年代別のベストセラー商品、毎年の主要な事象(項目別十大ニュース)などの情報があるので、これにちょっとした手を加えれれば、有用なクロノロジーが作成できる。

 あなたもできる限りでいいから、過去にさかのぼってなんらかの年表を作成してみてほしい。

 自社の売上高の推移グラフと自社年表、外部環境および内部環境における主要事象を年代順にした年表などを作成してみれば、思いがけない成果が導き出せるであろう。

シナリオプランニングであらゆる問題に対処する

 諜報員は未来に起こることを断定的に予言したりしない。なぜならば、「こうなるはずだ」という安易な思い込みが命を落としかねないからだ。

 だから、彼らは未来に起こり得るリスクをいくつか想定して、「こうなった場合はこうする」「ああなった場合はこうする」といった対策を考える。

 未来のことはわからない。2020年の米大統領選挙では、「トランプ氏が勝つか、バイデン氏が勝つか」で盛り上がり、「専門家」と言われる人が予想を外した。

 今回のウクライナ危機では、ほとんどの専門家は「ロシアは侵攻しない」と言い、 侵攻してからは「ロシアがウクライナを早期に制圧する」と言って予想を外した。名著 『超予測力』(フィリップ・E・テトロック/ダン・ガードナー)の中で、「平均的な専門家の予測の正確さは、チンパンジーが投げるダーツとだいたい同じぐらいである」と言っているが、全くその通りだ。

 むろん私も、専門の中国情勢といえども、正確に未来を予言することはできない。

 だが、ちょっと考えてほしい。たとえば、「トランプ氏が勝利するか、バイデン氏が勝利するか」というのは、本当にキークエスチョンだったのだろうか。