終電ギリギリまで残業しているのに仕事が終わらない人と、必ず定時で帰るのに成績No.1の人。この差はいったい何だろう? 努力が成果に反映されない根本的な原因はどこにあるのだろうか? そんなビジネスパーソンの悩みを本質的に解決してくれるのが、大注目の新刊『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。
著者は、東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長木下勝寿氏だ。
本書 の発売を記念し、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みをぶつける特別企画がスタートした。経営の最前線で20年以上、成果を上げられる人と上げられない人の差を徹底研究してきた木下社長にロングインタビューを実施。第15回目は、「ファーストキャリアの選び方」について、教えてもらった。(構成・川代紗生)

ここだけの話。「業界1位」と「業界2位以下」の社員の決定的な違い。

小さな業界でもいいから業界1位の会社に行け

──今回は、「ファーストキャリアの選び方」について相談させてください。

 新卒で入社する会社によって、その後のキャリアは大きく変わります。

 就活生に相談されることも多いと思いますが、木下さんはどんなアドバイスをしていますか?

木下勝寿(以下、木下):私が就職相談を受けたときに必ず言うのは、「小さな業界でもいいから業界1位の会社に行きなさい」ということです。

 というのも、2位以下の会社に入ってしまうと、それ以上の会社に転職するのが難しくなってしまうのです。

 1位の会社から2位の会社には転職しやすいですが、1位の会社は2位以下の会社から転職者をめったに受け入れません。

 2位以下の会社の「1位になれないやり方」の常識に染まっている人を教育し直して、1位の会社の仕事のやり方を教え込むよりも、先入観のない未経験者の伸び代のほうが期待できると考える経営者が多いからです。

 キャリアのはじめで1位の環境に入り、1位の常識に染まることができれば、その後の選択肢も広がります。

 そのため、まずは業界1位の会社を目指すのは、ファーストステップとしていいと思います。

1位になるには、1位の常識に染まること

──木下さんは、さまざまな経営者・成功者の方とお会いしてきたと思います。

 業界1位の人たちだけに共通する雰囲気は何だと思いますか?

 2位以下の会社との最も大きな差は何でしょうか。

木下:ほぼすべての業界に共通して言えることは、トップを走り続ける会社の特徴として一番大きいのが「競合ではなくお客様を見ていること」だと思います。

 2位以下の企業は、どうしても「打倒1位企業!」というように、「競合に勝つ」ための戦略や、競合に置いていかれないための戦略を練らざるをえません。

 競合をマネすることに必死で、1位の企業が出した新製品がドカンとヒットしたら、2位以下の企業がこぞってマネし始める。

 「競合よりいい製品をつくろう」と、いらない機能がどんどん増えていく……。

 お客様にとっては、あってもなくてもどうでもいい要素を増やすばかりで、本質的なニーズを理解できていない製品をつくり続けるようなことが起こります。

──売れている製品の分析をする企業も多いと思いますが、それだけでは勝てない、ということでしょうか。

木下:大きくヒットする商品は、たいてい「今までにない製品」です。

 ヒット商品のパターンをマネすると、その途端に「今までにない製品」ではなくなるので、だんだん売れなくなるという矛盾をはらんでいます。

 他社の当たったパターンばかり模倣している限り、トップを追い越すことはできません。

 当たりは自分で生み出すこと。

 お客様が何を求めているのか、お客様のどんな悩みを解決すればいいのかを本質的に理解することです。

 業界1位の会社が持っているのは、「すでにある市場でどう競合に勝つか」という視点ではなく、「市場をつくっていく」という視点。いや、気概です。

 もちろん、時に競合を意識することも大事ですが、基本的には、「顧客のニーズに答えるのが仕事」というスタンスが必須だと思います。

 いろいろな働き方がありますし、新卒で入社する会社の選び方は、目的やビジョンによっても変わりますが、「一度入社すると、その組織の常識に染まってしまう」ということは念頭に置いておくといいでしょう。

 ナンバーワンになりたかったら、業界1位の会社に入り、まずは業界1位の常識に染まることが大切です。

 そして今いる会社が2位以下なら「競合ではなく、お客様を見る」という視点のリセットをすべきだと思います。

(本稿は、『時間最短化、成果最大化の法則』に掲載されたものをベースに、本には掲載できなかったノウハウを著者インタビューをもとに再構成したものです)