同調圧力とアンコンシャス・バイアス

 アンコンシャス・バイアスを語るうえで、大きな影響力を持つのが、同調圧力です。同調圧力とは、少数意見を持つ人に対して多数意見に合わせさせるような空気がある、あるいは直接圧力をかけることを言います。世界中どこの国でも多かれ少なかれ同調圧力はあると思いますが、特に日本は多数派に従った方が楽だという志向が強く、「長いものには巻かれろ」という諺もあるほどです。そしてこの同調圧力が、より強いアンコンシャス・バイアスを生んでいるといってもいいのではないでしょうか。

 例えば、子どもの卒業式に参加するお母さんたちの服装を考えてみましょう。多くのお母さんが、紺や黒のスーツを着てきます。規則で強制されているわけではありませんが、「周囲から浮かないように、目立たないようにしよう。見苦しくないようにしよう」と考えた結果、個性を出さずに無難な服装を選んでしまいます。すると、「卒業式のような行事の時は、紺や黒のスーツで来なければならない」という暗黙の了解が自然と醸成され、それが人の行動を束縛することになってしまうのです。

 たとえ本人がそれは嫌だな、と思ったとしても、周囲の中で同調している方が目立たず、批判されることもないので、つい同調してしまうのでしょう。同調圧力は、このように卒業式の時の服装に限らず、世間のさまざまな常識を形作っています。この同調圧力は、「ピア(仲間からの)プレッシャー」と表現されます。仲間内だけで通じる価値観、思い込みという意味です。

 特に若い頃は、家族よりも友人の意見を大事にする時期でもあります。そのため、自分の仲間が受け入れてくれるような服装、ものの言い方、行動をしなければいけない、という思いにとらわれることが多いのです。