しがらみのない世界で、能力を発揮するために

 日本では、「和をもって貴とうとしとなす」「出る杭は打たれる」と言われるように、昔から争いごとはしない、異論を良しとしない文化があります。そのため、ユニークさや個人のオリジナリティーをあまり尊重しません。日本の小、中、高校教育は、みんなで一緒に学び、一緒に遊ぶスタイルです。そして子どもの頃から周囲と異なる行動は注意されることが多く、褒められた経験を持っていません。

 海外と日本の高校生の自己評価の比較調査では、日本の高校生はアメリカや中国に比べて自己評価や自己肯定感が特別に低いことがわかっています。しかし、その一方で日本を離れて海外で、さまざまな分野で成功をおさめている日本人も大勢います。国内では能力が抑えられていても、思い込みやしがらみのない、国外の自由な環境では自分自身の本当の能力が発揮できるのでしょう。

 今、この時代において、人それぞれに思い込みがある、と認めて他者を認め合わなければ、日本全体がアンコンシャス・バイアスにとらわれたままで、自分の意見を言ったり、提案したりすることができなくなり、新しいことが生み出せないのではないか、私はそう危惧しています。もっと日本全体に活気を取り戻し、生きやすくしていくためには、まず私たち自身が、アンコンシャス・バイアスから解放されることが大切なのです。

アンコンシャス・バイアスから解放されるには

 アンコンシャス・バイアスから解放されるために効果的なのは、「~べき」という自分の中での一方的な思い込みをやめ、他人の価値観もそれなりに尊重することです。私たちが生きていく中で、たびたび遭遇するのが、自分の中にある「~であるべき」といったいわゆる「べき論」です。

 特に危ないのは、その自分の「べき論」から外れている人に対して批判したり、攻撃したり、排除したりしてしまうことです。人間それぞれ、自分なりの価値観を持っているわけですが、それを他人に押し付けてはいけません。そうやって自分の「べき論」に凝り固まってしまうと、その人自身も生きづらくなってしまいます。