コロナ「2類相当か5類か」の論争が不毛な訳、思考停止していないかPhoto:PIXTA

岸田文雄首相が、新型コロナウイルスの位置付けを「2類相当」から「5類」に変更する方針を明らかにし、議論を呼んでいる。この点について、筆者はかねて「5類扱いにすべき」だと主張してきたものの、ここにきて「その考えは少し間違っていたかもしれない」と思い直すようになった。既存の類型に無理やり当てはめ、二者択一で議論することに疑念を抱くようになったからだ。では、感染抑止と経済活動を両立するには、どのような方策が適切なのか。筆者の考えを提案したい。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

当初「2類相当」は妥当だったが
次第にボロが出始めた

 岸田文雄首相が1月20日、感染症法における新型コロナウイルスの位置付けを、現状の「指定感染症2類相当」から季節性インフルエンザと同等の「5類」へ引き下げる方針を固めた。

 この類型について整理しておくと、新型コロナは感染が広がった当初、その実態が謎に包まれていたため「2類“相当”」という特殊な分類になった。

 厳密に言うと、現在の新型コロナは感染症法における1類~5類の区分には当てはまらない「新型インフルエンザ等感染症」という位置付けになっている。

 そのため、結核などの通常の「2類」に該当する疾患とは、国や自治体が講じることができる措置が異なる。具体的には、「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」の対象疾患として「緊急事態宣言措置」などの行動制限を実施することが可能となっている。

 医療費を公費で負担する点や、感染者の入院を受け入れる医療機関が「感染症指定医療機関」に限られる点などは、通常の「2類」と同等だ。

 一方、「5類」は季節性インフルエンザと同じく入院・隔離措置がなく、保健所、行政に届け出る必要はない。だが、医療費の一部は患者自身が負担しなければならない。

 双方に良しあしがあるため、昨今の世論では、新型コロナが「2類相当」と「5類」のどちらが適切なのか、二者択一の議論が過熱してきた。

 この点について、新型コロナが「得体の知れない感染症」だった2020年初頭は、「2類相当」という扱いは妥当な措置であり、疑問を持つ人は少なかったかもしれない。