左翼活動家を民主主義信奉者と
誤解する韓国社会

 民主主義国家である韓国において、左翼主義者が大きな影響力を保持し続ける理由を、日本人は理解し難いであろう。それは韓国の戦後史と大きな関係がある。

 韓国では、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領による軍事政権が長く続いた。その間、市民による民主主義を求める活動に対し、政府は厳しく取り締まり、大学生など多くの若者たちが刑務所に送られた。彼らは拷問を受けるなど厳しい取り調べを受けたという。

 そうした学生の中に文在寅氏もいた。朴正煕大統領時代、ソウルにあった西大門刑務所に入れられた。また、全斗煥氏が光州事件を取り締まる際にも予防的に拘束され、司法試験の合格通知は拘置所の中で受け取ったという。

 全斗煥大統領によって拘束された学生活動家は現在60歳前後で、韓国社会では指導的立場にいる。そうした人々の中には、保守・反動は民主主義に反する「悪」、革新は民主主義を前進させる「善」であるとの感情をいまだ持ち続けている人が多い。

 また、金大中、盧武鉉元大統領の革新政権下では、革新を信奉し、軍事政権を否定する教育を行った。そうした教育を受けた人も、保守を「悪」、革新を「善」とする意識を持ち続けている。

 文在寅政権で青瓦台や「共に民主党」で中心的な役割を果たしてきたのは、こうした革新系の人々である。彼らは、保守への対抗意識を持って育ってきたため、団結力が強い。保守をたたき、革新を守ることに熱心である。揺るぎない結束が革新の強みである。

 そうした革新系の人々は、北朝鮮の核開発や挑発に対しては寛大である。北朝鮮は同胞であり、北朝鮮の核ミサイル開発は韓国に向けたものではないと思い込んで(あるいは自分に言い聞かせて)いる。また、金正恩政権の核開発が北朝鮮人民の窮乏を招いていることにも目をつむり、北朝鮮人民の窮乏を救うために協力しようとの姿勢である。

 このように韓国人が北朝鮮を性善説で見ることにより、北朝鮮スパイにとって、韓国社会での工作の余地が広がった。

 北朝鮮の核開発が戦略核から戦術核を中心としたものに代わり、韓国を明らかな標的とするものになった。さらに、北朝鮮の挑発も激しくなっている。このため、韓国の若者層では北朝鮮に対する見方が変わりつつある。しかし、いまだに50代以上の世代の多くは北朝鮮に寄り添っており、北朝鮮スパイの活動を軽視する風潮は続いている。