韓国社会の政治的分断が
北朝鮮スパイに隙を与える

 朝鮮日報は、新年の特別企画として、世論調査に基づく韓国社会の政治的分断状況について報じている。韓国国民の40%は「政治傾向の違う人とは食事もしたくない」と言い、20代の半数は「恋愛や結婚は支持政党の違う人とは難しい」という。また、韓国人の66%は「われわれは合理的で正しく、反対派は客観的事実を認めず偏向している」と主張するという。

 この数字が示すように、韓国国民の間の政治的分断はもはや修復、和解できないところまで来ており、対話が成り立たなくなっている。これが、北朝鮮スパイには格好の機会を与えている。

 文在寅氏は自らの政権について、朴槿恵政権を「ロウソク革命」で打倒してできた、民意が作った政権だという。しかし、そこに北朝鮮スパイの影響力があった可能性は否定できないかもしれない。

 朴槿恵元大統領が、友人の崔順実(チェ・スンシル)氏に機密情報を漏らし、国政において強い影響を受けていたとの暴露をきっかけに起きた、大規模デモ(ロウソクを持っていたことからロウソク集会と言う)を主導したのは、民主労総をはじめとする革新陣営である。朴槿恵大統領は、抗議活動の全国的な広がりで最終的には弾劾され、退陣した。

 今回の民主労総への国家情報院の捜査において、北朝鮮スパイと朴槿恵弾劾の関係についての言及はいまのところない。

 だが、民主労総の幹部が海外で北朝鮮のスパイとの折衝を始めたのが2016年(17年という説もある)、ローソクデモによる朴槿恵大統領弾劾が2017年である。この時系列からして、朴槿恵弾劾に北朝鮮スパイの関与があったと推定することは、行き過ぎだろうか。

 韓国・済州(チェジュ)の北朝鮮スパイ組織が尹錫悦氏の大統領当選直後となる昨年3月29日、「韓米合同軍事演習に反対する大衆闘争を集中展開し、就任を控えた尹錫悦はもちろん米国にも強力な圧迫攻勢をかけなければならない」という内容の指令を受け取ったことから見ても、朴槿恵大統領弾劾に一役買った可能性は否定できないだろう。

 それは韓国社会の分断を利用し「好ましくない大統領」を退任に追いやった、巧妙な政界工作の可能性がある。

 尹錫悦政権は北朝鮮に対する強硬な姿勢を取り続けている。

 また、「共に民主党」代表の李在明氏が城南市長時代に都市開発絡みで不正を働いた疑惑、サッカークラブ「城南FC」への寄付の見返りに企業に便宜を与えた疑惑なども追及している。

 さらに、尹錫悦政権は北朝鮮が韓国水産庁の職員を射殺したことに関連し、文在寅政権が真相をわい曲した疑惑を提起している。

 こうしたことからも、北朝鮮にとって尹錫悦大統領は邪魔な存在である。そこで、北朝鮮は保守・革新の対立・分断を利用し、韓国の国内政局を不安定化させ、あわよくば尹錫悦政権を退陣に追い込もうと考えていたとしても不思議ではない。

 韓国政界で対話が失われたことで、北朝鮮に利用される余地を生じさせている。