北朝鮮との連絡窓口に
変えられた国家情報院

 文在寅政権は、本来北朝鮮のスパイや国内の反体制運動を取り締まるべき国家情報院の性格を、北朝鮮との連絡窓口に変貌させた。

 初代の国家情報院長となった徐薫(ソ・フン)氏は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で国家情報院の第3次長として北朝鮮との連絡役を果たしてきた人物であり、北朝鮮の金正日総書記が韓国の官僚の中で唯一顔と名前を知る人物といわれた。

 国家情報院は2017年、「忠北同志会」という組織が忠清北道清州市を中心に活動し、F35ステルス機導入反対運動を展開したのが北朝鮮の指令によるものであると把握しながら、徐院長の「南北関係は改善しているが、スパイ事件が起こされれば悪影響を及ぼすので保留しよう」の一言で裁可しなかったため、起訴できなかったという。

 次の院長となった朴智元(パク・チウォン)氏は金大中(キム・デジュン)元大統領の側近であり、同元大統領と金正日との首脳会談を仲介した人物であるが、その際5億ドル(約650億円)の秘密資金を渡したとして逮捕され、服役した人物である。同院長はスパイ活動など共産主義活動の捜査を行う対共捜査権を、経験豊富な国家情報院から警察に移管させ、対共捜査権を弱体化させるのに主導的な役割を果たした人物である。

 院長の関心事は国家情報院を北朝鮮との窓口にすることであったため、文政権下では北朝鮮スパイの活動は事実上黙認された。

 自由民主研究院のユ・ドンヨル院長によれば、2011年から17年までのスパイ摘発件数は26件であったが、文在寅政権(2017年~22年)での摘発件数は全体で3件だったという。しかもその3件は朴槿恵(パク・クネ)前政権時代に捜査中であった事件であるため、文在寅政権下での摘発は実質ゼロである。

 北朝鮮スパイに対する取り締まりがほぼなくなったことにより、彼らは韓国社会の中で大きく活動領域を広げたことであろう。