世界を同時に襲った歴史に類を見ない経済危機から、およそ9ヵ月が経ちました。
日本では、先頃政府が「景気は底打ちした」との見解を示しましたが、電機や自動車産業では、2008年度に続き09年度も巨額の赤字を見込む企業が多く、景気回復にはほど遠いのが実情です。
そんななかで、相対的に元気があるのが中国経済でしょう。昨年のリーマンショック直後の9月、11月、そして今年5月と定期的に現地取材を重ねてきました。その間、経済成長率は9%から6%台まで落ちましたが、消費の勢いは依然として衰えていません。
レストランはどこも客で溢れ返っており、夜の繁華街は多くの人で賑わっています。上海ではタクシーもなかなかつかまらない状況です。
北京では、郊外へとマンション建設が広がったことで、クルマが生活必需品となりつつあり、4月の自動車販売は過去最高を記録しました。
もちろん、明るい話ばかりではありません。11月と5月の2度に渡って取材した上海の輸出企業の経営者は、「20年この商売をやっているが、こんなに悪かったことは一度もない」と嘆いていました。
また、広告業界は、企業の広告費用削減で業績が低迷しており、大手の広告関連企業に勤める友人は、「人員削減はしていないが、管理職の給与は一律20%カットになった」とこぼしていました。
出張の日当をなくしたり、残業手当を減らしたりと、経費削減を徹底的に行なっているようです。
ただ、こんな状況下でも、景気を悲観視する人はほとんどいません。先の友人も、給料が減っているのにクルマを買い換え、2軒目のマンションを購入しています。
「日本の不況は“マスコミ不況”だ」と、ある企業の社長からお叱りを受けました。マスコミが必要以上に不況宣伝をするから、消費マインドが冷え込んでいる、というのです。
確かに、われわれマスコミも含めて、日本はもっと楽観的に物事を考えたほうがいいのかもしれません。
本特集では、詳細な現地取材に基づく中国経済の実情に加え、GM(米ゼネラル・モータース)破綻で揺れる米国経済、在庫調整が進み生産が上向き始めた日本経済の動向を、総力取材で網羅しています。
また、シャープ、ニコン、商船三井、全日本空輸、コマツなど主要企業のトップ、日米欧のエコノミスト、学者など総勢75人の「景気先行きについての予測」も一挙掲載しました。
果たして、2009年、世界経済は底打ちして回復に向かうのか? 80ページの大特集をご堪能ください。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)