企業ができることは?有害物質を「出禁」にさせる

 では、企業は具体的に何をすべきか。もちろん、最も効果があるのはヘビースモーカー社員に対して、会社や上司が禁煙を推奨して、たばこを止めてもらうことであることは言うまでもない。

 しかし、日本は「たばこ事業法」という法律があって、国家として「たばこ産業の健全な育成」を後押ししている。国としては「防衛費の財源にもするので、もっとじゃんじゃん吸ってください」というスタンスなのに、自分の勤務先から、「顧客や同僚に迷惑がかかるから禁煙しろ」と呼びかけられて素直に聞き入れるわけがない。

 だから、ヘビースモーカー側からすれば、会社や上司から禁煙を勧められるというのは、パワハラを受けるのと同じくらい理不尽な仕打ちなのだ。そうなると現時点で、企業ができることはひとつしかない。それは、「喫煙後に、口に残ったアレルギーや喘息を引き起こす有害物質を持ち込ませない」というものだ。

「喫煙者の口臭に含まれる有害物質の濃度を検査した調査では、喫煙前の口臭に戻るまで約45分かかることが判明しています。この有害物質はガス状物質なので、含嗽剤(がんそうざい・口や喉のウイルスなどを殺菌するうがい薬)やマスクでは根本的な対策にはなりません。つまり、喫煙をしたら最低でも45分間は、妊婦や喘息、アレルギー体質の人との接触をさせないことが必要なのです」(大和教授)

「そんなムチャクチャなことができるわけないだろ」と冷笑するヘビースモーカー社員の方も多いかもしれないが、実はもう既にいくつかの企業では、たばこ臭い息に対するリスク対策として導入している。

 例えば、野村ホールディングスは21年10月から、就業時間中は全面禁煙を実施しているが、そこで受動喫煙対策として、昼休みなどに喫煙した場合、喫煙後45分間はオフィスに戻らないことを強く推奨をしている。イオングループでも、出勤前や昼休憩後、職場に入る45分前の喫煙をしないように求めている。