賃貸物件に住んだ場合の
試算はどうなる?

 次に、マンションを購入せずに賃貸物件に住むケースも試算してみましょう。東京都内に住む場合も考慮して、賃料は月12万円、年間144万円とします。この程度の家賃を支払えば、都心でも独り暮らしには十分な1R~1Kなどの物件に住めるからです。

 ただ、賃貸物件では2年に1回、1カ月分の更新料が追加で発生するケースが多いです。今回は試算の都合上、この更新料を月割りに換算し、もともとの家賃にプラスする形にします。

 そのため家賃は5000円アップし、月12万5000円、年間150万円の住居費が発生する計算になります。

 冒頭の試算では、Cさんの帰国後の生活費は月35万円、年間420万円としましたが、これには購入したマンションの共益費や修繕積立金を含んでいました。一方で、賃貸物件の家賃を含んでいなかったので、一度整理しておきましょう。

 家を借りる場合の試算では、共益費や修繕積立金(合計で月2万5000円程度と想定)は発生しないことにします。そして、家賃の12万5000円を加えます。

 すると、月間支出は45万円、年間支出は540万円です。フルリタイア後なので、この金額がそのまま年間赤字額になります。

 家を借りる場合の金融資産額も見ていきます。先ほどは、Cさんが帰国し、4000万円の物件を買った後の金融資産額を8170万円としましたが、今回は物件の購入は発生しません。そこで、支払額を元に戻した1億2170万円を58歳時点の金融資産とします。

 そこから、年金受給が始まる67歳までの9年間で4860万円(540万円×9年間)を取り崩した残りは7310万円です。

 ただ、家電の購入や買い替えは賃貸でも発生するので、先ほども考慮した予備費を試算に含めます。金額は家を買う場合の6割(300万円)に抑えておきます。7310万円から300万円を差し引いた7010万円が、67歳時点で保有している金融資産額です。

 ここでもCさんの年齢とともに支出額が減少し、67~76歳の10年間は毎月の支出を従来より5万円減の40万円(年間480万円)、77歳以降はさらに5万円減額して35万円(年間420万円)とします。

 一方、67歳以降は手取りで200万円の年金収入が発生するため、年収は0円ではなくなり、67~76歳の年間赤字額は280万円に縮小します。10年間の累積赤字は2800万円で、67歳時点の金融資産額7010万円から差し引いた残りは4210万円です。

 77歳以降の年間赤字額は、さらに少ない220万円です。ただ、上記の4210万円から毎年220万円を取り崩していくと、19.1年後(Cさんが96歳ごろ)に底を突いてしまいます。こちらも人生100年時代にはやや物足りない数字です。