家でできるアトピーの対処法
患者さん自身で工夫できそうなこともご紹介しましょう。
アトピー性皮膚炎の患者さんには金属アレルギーを併発している方が多くいます。そういう方は、金属を豊富に含むコーヒー、ココア、紅茶、チョコレート、豆類や玄米を、体調を見ながらまず2週間程度控えてみてください。
お子さんがアトピーだと、親はつい「かいちゃダメ」と叱ってしまいますが、なるべく言わないようにしましょう。人間にはダメと言われるとついやりたくなる、心理的リアクタンスがあるからです。
「鶴の恩返し」で「覗いてはいけませんよ」と言われ続けたおじいさんが、最後に扉を開けて中の様子を見てしまう、あれです。子どもだってかいちゃいけないことは十分わかっているのですから、追い討ちをかけては逆効果になります。
代わりに、適度に冷やしてやってください。冷たすぎると痒みを強めるので、タオルに包んだ保冷剤を当てる程度がいいでしょう。お風呂の湯温は38~40度に。市販のメンソール配合の痒み止めも有効です。かき癖のある子には、爪を短く整えてやすりで磨いたり、手触りの良いぬいぐるみを持たせたりもします。
最近の研究で、視覚に入る色によって痒みの感じ方が変わることがわかってきました。青色空間に入った人は痒みが治まり、赤色空間に入った人は痒みが誘発されたというデータもあります。お子さんが痒がる場合には、青色系のおもちゃを与えるといいかもしれません。その他、痒みを直接抑える新薬がたくさん出ているので、病院に相談してください。
コミュニケーションと制度と医学の発展が脱ステを救う
アトピーをめぐる分断に戻りましょう。脱ステロイドの患者さんは激減したものの、いまだゼロにはなっていません。
この分断を乗り越えるには、3つの方法があります。1つはコミュニケーションです。「SNS医療のカタチ」のように、優しく親切にわかりやすく情報を伝えていくこと。診察室で医者が患者さんを怒るようでは、医療不信はなくなりません。
制度も大切です。脱ステロイドの患者さんが減ったのは、ガイドラインができ、どの病院でも同じ治療が受けられるようになった賜物だと思います。その一方で、自由診療の名のもとに、間違った医療を大目に見る風潮も残っている。今後はある程度の規制が必要になるかもしれません。
そしてなんと言っても重要なのが、医学の発展です。アトピー性皮膚炎を治せるようになれば、問題は解消されるのです。我々医療者に求められるのは、やはり医学を発展させることだと思います。
私自身、医者になったからには患者さんを治す薬や医療法を開発しようと、大学で日々頑張っています。患者さんには、アトピー性皮膚炎治療は今、大きく発展していて、病院の皮膚科で診てもらえばきっとよくなりますから、まずは怖がらずに相談してください、とお伝えしたいです。
(※本原稿は、2022年8月20日、21日に開催されたオンライン配信を元に記事化したものです)