経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
脱税で金持ちになった人
【前回】からの続き あってはならないことですが、富裕層のなかには、“税金逃れ”を続けてお金持ちになった人もいます。このことも、富裕層の職業に中小企業経営者や個人事業主が多いことに関連しています。
みなさんは、「クロヨン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? これは、自営業や農業従事者に比べて、会社員(給与所得者)の税負担が重いことを指す言葉です。所得に対してとられている税金が、給与所得者、自営業者、農業従事者で、おおむね「9:6:4」になることから、クロヨンといわれるようになりました。
職業別の税負担に公式な統計はありませんから、9:6:4に数字としての具体的な根拠はありません。しかし、税金の構造として、自営業者のほうが会社員よりも税負担が低くなりやすいことは否めません。
公務員よりフリーランスのほうが得?
会社員の場合、勤務先を通じて毎月の給料やボーナスから「源泉徴収」という名の税金をとられています。この税金から逃れることは、ほとんど不可能です。私も公務員の頃を振り返ると、税務職員であるにもかかわらず、自分自身の税金については、ほとんど考えたことがありませんでした。
「税金は勝手にとられるもの」という意識だったのです。しかし、自営業者の場合、毎年の「確定申告」の内容次第で納税額が変わります。そして、ある程度の知識があれば、「節税」することができます。
私は個人事業主として独立し、その後、「法人成り(法人化)」したのですが、公務員時代と打って変わって節税について考えるようになりました。活用できる節税方法をきちんと使わなければ、多額の税金に耐えかねて商売をたたむ可能性もあるわけですから、真剣です。
脱税したまま生涯を終える人もいる
もっとも、正当な節税であればいいのですが、法律に違反した方法で税負担を避けることはけっして許されません。たとえば、仕事とは関係のないプライベートの支払いを税金上の経費として申告する。あるいは意図的に確定申告をしないで税金を逃れる。そのようなケースが、自営業者の場合はよく見られるのです。
もちろん、こうした自営業者に対して、税務署は税務調査をして厳正に対処します。ところが、日本全国に1000万人以上いるとされる自営業者のすべてを税務調査することは、事実上不可能なのです。そのため、本来納めるべきだった税金を納めずに生涯を終える自営業者が出てきます。【次回に続く】
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。