今月22日は「猫の日」だが「頭痛の日」でもある。
一口に頭痛といっても、基礎疾患によらない「一次性」と脳卒中や感染症など原因が明らかな「二次性」に分類される。
一次性頭痛の代表は片頭痛だ。国内の患者数は800万~1000万人と推計され、男女比では1対4と女性が多い。
典型的な症状は、片方のこめかみ辺りに生じる「ズキン、ズキン」と脈打つ痛みで、時には吐き気を伴って72時間も続く。大きな音や光刺激に過敏になり、少し身体を動かしただけで痛みが増幅するので、その間は薄暗い静かな部屋に閉じこもるしかない。
一説では、片頭痛によるパフォーマンス低下で生じる経済的な損失は年間推計2兆円にものぼる。なにより、一月のうちに何度も発作に襲われる当事者の苦痛は計り知れない。
ただこの数年、片頭痛の治療に大きな変化が訪れている。
その一つが予防薬の登場だ。2021年に相次いで上市され、23年2月現在、国内で使用できるのは3剤。月に1回・1本の皮下注射剤で(1剤は3カ月ごとに3本も選択できる)、うち2剤は自己注射が可能だ。
一連の臨床試験の結果をみると、頭痛発作の回数がおおむね4~6割減り、生活の質は有意に向上した。確かに毎週2、3日寝込んでいたものが半分になれば、大げさではなく人生ががらりと変わる。
おととし、8年ぶりに改訂された「頭痛の診療ガイドライン2021」においても、予防薬が強く推奨されている。
副作用は、注射剤につきものの急性アレルギー症状(アナフィラキシー)や注射した場所の痒みや腫れなど。薬剤の自己負担額は初回だけ変動があるものの、一月当たり1万数千円、1日当たりの換算では440円ほどだ。これを高いとみるか、安いとみるかは個々の症状によるだろう。
これら片頭痛の予防薬は、まだまだ新しい薬剤なので処方できる施設は限られている。慢性的な片頭痛に苦しめられてきた方は、この機に頭痛専門外来や脳神経内科を受診してみよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)